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少数株主とは?同族株主との違いと判定基準

執筆・運営:少数株ドットコム株式会社

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はじめに・用語解説

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約10分
構成
5セクション

非上場株式について調べていると、少数株主という言葉に必ず行き当たります。ところが、この言葉が何パーセント以下の株主を指すのかを調べようとすると、はっきりした答えが出てきません。それもそのはずで、少数株主という用語そのものを定義した条文は、会社法にも税法にも存在しないからです。

実務では、会社の意思決定を単独では左右できない程度の持分しか持たない株主、という程度の意味で使われています。ただし、どの文脈で語られているかによって、意識されている基準はまったく違います。会社法の話をしているのか、相続税評価の話をしているのかで、注目すべき数字が変わるのです。この記事では、その両方を並べて整理します。

会社法の文脈では、割合ごとに手札が変わる

会社法は少数株主を定義しませんが、株主の権利を保有割合と結びつけて設計しています。1株でも行使できる権利を単独株主権、一定割合以上を保有していなければ行使できない権利を少数株主権と呼ぶのが講学上の整理です。

代表的な閾値を低いほうから並べると、次のようになります。

総株主の議決権の100分の1以上または300個以上で、取締役会設置会社における株主提案権が行使できます(会社法303条・305条)。総株主の議決権の100分の1以上で、株主総会の招集手続および決議の方法を調査させるための検査役の選任を裁判所に申し立てることができます(会社法306条)。

総株主の議決権の100分の3以上または発行済株式の100分の3以上になると、会計帳簿閲覧謄写請求権(会社法433条)と、会社の業務および財産の状況を調査させるための検査役選任の申立て(会社法358条)が使えます。総株主の議決権の100分の3以上では、株主総会の招集請求権(会社法297条)も認められます。役員に不正行為等があったにもかかわらず解任議案が否決された場合の解任の訴え(会社法854条)も、議決権または発行済株式の100分の3以上が要件です。

総株主の議決権の10分の1以上または発行済株式の10分の1以上であれば、やむを得ない事由があるときに会社の解散を求める訴えを提起できます(会社法833条1項)。

ここから先は、割合そのものが議決の結果を動かす領域です。議決権の3分の1を超えて保有していれば、定款変更や合併といった特別決議を単独で阻止できます。過半数を保有していれば普通決議を単独で成立させることができ、3分の2以上であれば特別決議も単独で成立します。

なお、公開会社では6か月前から引き続き株式を保有していることを求められる権利がありますが、譲渡制限株式のみを発行する非公開会社ではこの保有期間の要件が課されません。相続で株主になった直後でも、割合の要件さえ満たしていれば行使できます。会計帳簿閲覧謄写請求権については、公開会社であっても保有期間の要件はありません。

上から迫ってくる閾値もある

少数株主の側から見て意識しておきたいのが、会社法179条の特別支配株主の株式等売渡請求です。対象会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する株主は、会社の承認を得たうえで、他の株主が有する株式の全部を強制的に取得することができます。平成26年の会社法改正で導入された制度で、非公開会社でも利用できます。

つまり、支配株主側が90%以上を握っている会社では、少数株主は自分の意思にかかわらず株式を手放すことになる可能性があります。売渡株主は取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対して売買価格の決定を申し立てることができますが、株式を持ち続けるという選択肢自体は残りません。少数株主にとって、支配株主側の持株比率がどのあたりにあるのかは、それ自体が重要な情報になります。

税法の文脈では、同族株主かどうかで評価方法が変わる

相続や贈与の場面で少数株主という言葉が出てくるとき、その背後にあるのは会社法の閾値ではなく、財産評価基本通達の同族株主の判定です。

取引相場のない株式の評価では、会社の経営支配力を持つ株主が取得した株式は原則的評価方式(類似業種比準方式・純資産価額方式またはその併用)で、それ以外の株主が取得した株式は特例的評価方式である配当還元方式で評価します。配当還元方式のほうが低い金額に算定されることが多いため、どちらに振り分けられるかで相続税額が大きく変わります。

同族株主の判定は30%と50%超

財産評価基本通達188は、同族株主を次のように定めています。課税時期における評価会社の株主のうち、株主の1人およびその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の30%以上である場合におけるその株主およびその同族関係者です。ただし、議決権の合計数が最も多いグループが議決権総数の50%超を有する会社では、基準は50%超になります。過半数を握るグループがあればそのグループだけが同族株主となり、そうしたグループがなければ30%以上のグループが同族株主になる、という関係です。

ここでいう同族関係者は、法人税法施行令4条に規定する特殊の関係のある個人または法人を指します。親族のほか、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者、株主等の使用人、株主等から受ける金銭その他の資産によって生計を維持している者などが含まれます。

判定が個人単位ではなくグループ単位である点が重要です。本人が数パーセントしか持っていなくても、親族等を合算したグループが基準に達していれば、その本人も同族株主に含まれます。

同族株主でも配当還元方式を使える場合がある

同族株主に当たれば必ず原則的評価方式になる、というわけではありません。通達188(2)は、中心的な同族株主のいる会社の株主のうち、中心的な同族株主以外の同族株主で、その者の株式取得後の議決権の数が議決権総数の5%未満であるもの(課税時期において役員である者、および課税時期の翌日から法定申告期限までの間に役員となる者を除きます)が取得した株式については、配当還元方式によることができるとしています。

中心的な同族株主とは、課税時期において同族株主の1人ならびにその株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹および1親等の姻族の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の25%以上である場合におけるその株主をいいます。同族関係者よりも範囲が狭く絞り込まれている点に注意が必要です。

ここでの役員の範囲も限定的です。社長、理事長のほか、法人税法施行令71条1項1号・2号・4号に掲げる者、すなわち代表取締役や代表執行役、副社長・専務・常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員、会計参与、監査役などが該当します。肩書のない平取締役は、この定義には含まれません。役員に名を連ねているから配当還元方式は使えない、と早合点する必要はないということです。

同族株主のいない会社の場合

どのグループも30%に届かない会社では、そもそも同族株主が存在しません。この場合の判定は通達188(3)と(4)によります。

まず、株主の1人およびその同族関係者の有する議決権の合計数が議決権総数の15%未満であれば、配当還元方式になります。

15%以上のグループに属していても、中心的な株主がいる会社であって、その者の株式取得後の議決権の数が議決権総数の5%未満であり、かつ前述の役員に当たらなければ、配当還元方式によることができます。中心的な株主とは、株主の1人およびその同族関係者の有する議決権の合計数が議決権総数の15%以上である株主グループのうち、いずれかのグループに単独で議決権総数の10%以上の議決権を有している株主がいる場合における、その株主をいいます。

配当還元方式には上限がある

通達188-2は、配当還元方式によって計算した金額が、その株式を原則的評価方式によって評価するものとして計算した金額を超える場合には、原則的評価方式による金額で評価するとしています。配当還元方式は評価を引き下げるための方法ではなく、経営に関与せず配当を受け取る立場という実態に沿った評価方法として位置づけられている、ということです。

法人税法上の「同族会社」とは別の話

紛らわしいのですが、法人税法にも同族会社という概念があり、こちらにも50%という数字が出てきます。法人税法2条10号は、会社の株主等の3人以下ならびにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人および法人が、その会社の発行済株式または出資の総数または総額の50%を超える数または金額の株式または出資を有する場合における、その会社を同族会社としています。

こちらは会社そのものが同族会社に当たるかどうかの判定で、同族会社の行為計算の否認や留保金課税といった法人側の取扱いにつながります。株主一人ひとりについて評価方法を振り分ける相続税評価の同族株主判定とは、目的も判定の単位も異なります。同じ50%という数字が出てきても別の制度だと切り分けておくと、混乱を避けられます。

会社法上の少数株主と、税法上の少数株主はずれる

この2つの物差しは連動していません。そして、そのずれが実務上の悩みを生みます。

たとえば、議決権の総数が1,000個の会社で、創業家のグループが合計700個(70%)を保有しているとします。相続によって、そのグループの一員であるAさんが単独で60個(6%)を承継し、Aさんに役員の肩書はない。こうした設例で考えてみます。

会社法の物差しでは、Aさんは6%の株主です。会計帳簿の閲覧謄写を請求したり株主総会の招集を請求したりすることはできますが、単独で議案を可決することも否決することもできません。典型的な少数株主です。

一方、相続税評価の物差しでは、Aさんは50%超を保有するグループに属していますので同族株主に当たります。仮にこの会社に中心的な同族株主がいたとしても、通達188(2)の適用には取得後の議決権が5%未満であることが必要ですので、6%のAさんはこれを満たしません。結果として原則的評価方式で評価されることになります。

経営に関与できず、配当も乏しく、売却先も限られている。それにもかかわらず、相続税評価額は会社の純資産や利益を反映した高い金額で計算される。非上場株式の相続でご相談が持ち込まれる典型的な構図が、ここにあります。1%の違いで結論が反転しうるのが、この判定の厄介なところです。

呼び名ではなく、数字を押さえる

自分が少数株主かどうかを考えるとき、実際に確認すべきなのは次の3点です。自分ひとりの議決権割合、親族等を含めたグループ全体の議決権割合、そして自分が中心的な同族株主に当たるかどうか(および会社に中心的な同族株主がいるかどうか)です。

これらは株主名簿と定款を確認しなければ分かりません。株主名簿の閲覧謄写は1株の株主でも請求できますので、会社が教えてくれないという段階で立ち止まる必要はありません。議決権制限株式が発行されている場合は、株式数と議決権数が一致しない点にも注意が必要です。

そのうえで、評価方法の当てはめは税理士に確認してください。ここで挙げた要件はいずれも判定の順序が決まっており、ひとつの数字を取り違えると結論が反転します。そして、評価額が高く出るからといって、その金額で売れるわけではないという点も押さえておく必要があります。相続税評価額はあくまで課税のための金額であり、実際に現金化できる金額とは別のものです。両方の数字を並べて初めて、持ち続けるのか手放すのかを判断する材料が揃います。

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