取締役会設置会社と非設置会社で異なる、株式譲渡承認の手続き
譲渡制限株式を売却するときは、発行会社の承認を得る必要があります。ただし「誰が承認するのか」は、会社によって異なります。会社法139条1項は、譲渡等の承認をするか否かの決定について、取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会の決議によると定めています。同項にはただし書きがあり、定款で別段の定めを置くことも認められているため、最終的には定款の確認も必要です。
自分が株式を持つ会社がどちらに当たるかは、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)で確認できます。取締役会設置会社であれば、その旨が登記事項とされています(会社法911条3項15号)。非上場の中小企業には取締役会を置いていない会社も少なくないため、「当然、取締役会で決まるだろう」と考えていると、実際の手続きと食い違うことがあります。
取締役会が承認機関の場合、決議は原則として、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数の賛成で成立します(会社法369条1項)。役員数名の会議体ですので、招集から決議までは比較的短期間で進みます。なお、譲渡の当事者である取締役は特別の利害関係を有する者として議決に加われないと解されており(同条2項)、この点が結論に影響することもあります。
株主総会が承認機関の場合は、普通決議によるのが原則です(会社法309条1項)。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で決まります(定款で定足数を緩和している会社もあります)。ここで押さえておきたいのは、判断するのが「役員」ではなく「議決権の多数派」だという点です。同族経営の会社では経営者側が議決権の大半を握っているケースが多く、実質的には経営者の意向が承認の可否を左右しやすくなります。また、株主総会では取締役会と異なり、利害関係のある株主も議決権の行使自体は妨げられないと解されています。
もっとも、承認機関がどちらであっても、請求の日から2週間以内に会社が承認・不承認の通知をしなければ、承認したものとみなされます(会社法145条1号。定款でこれを下回る期間を定めた場合や、会社と請求者との間で別段の合意をした場合は、それに従います)。会社側が総会や取締役会を開かずに放置しても、それだけで手続きが止まるわけではありません。
売却を検討する段階で、承認機関がどちらなのかを先に確認しておくと、請求後にどのような判断プロセスをたどり、誰の意向が効いてくるのかを見通しやすくなります。