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株主名簿閲覧謄写請求権とは?会社が教えてくれない株主構成を調べる方法

執筆・運営:少数株ドットコム株式会社

カテゴリ

少数株主の権利

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約9分
構成
7セクション

非上場会社の株式を持っているのに、自分が何パーセントの株主なのか分からない。他に誰が株主なのか会社が教えてくれない。相続で株式を引き継いだ方や、長年にわたって配当の通知だけを受け取ってきた方から、こうしたご相談をいただくことは珍しくありません。上場株式であれば証券口座の残高で保有数がすぐ分かりますが、非上場株式にはその仕組みがないためです。

このとき、法律が用意している入口が株主名簿の閲覧謄写請求権です。会社法125条を軸に、何がどこまで確認できるのかを整理します。

株主名簿には何が書かれているのか

株式会社は株主名簿を作成しなければならず、記載すべき事項は会社法121条に定められています。具体的には、株主の氏名または名称および住所、その株主が有する株式の数(種類株式発行会社であれば株式の種類と種類ごとの数)、その株主が株式を取得した日、そして株券発行会社であれば株券の番号の4つです。

つまり株主名簿を見ることができれば、誰が株主として名を連ねているのか、それぞれが何株持っているのかが分かります。発行済株式の総数は登記事項証明書でも確認できますので、両方を突き合わせれば自分の持株比率と株主構成の全体像がつかめることになります。

置き場所も決まっています。会社法125条1項は、株式会社は株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあってはその営業所)に備え置かなければならないと定めています。

もっとも、実務では株主名簿が長らく更新されていない、あるいは事実上作られていないという中小企業も見受けられます。備え置きを怠った場合や記載すべき事項を記載しなかった場合、取締役等は100万円以下の過料に処される可能性があると会社法976条は定めていますが、現実には整備が行き届いていない会社があるのが実情です。請求してみて初めて名簿の不備が判明する、ということもあります。

1株の株主でも請求できる

会社法125条2項は、株主および債権者は、株式会社の営業時間内はいつでも、株主名簿の閲覧または謄写を請求することができると定めています。名簿が書面で作成されていれば書面の閲覧謄写を、電磁的記録で作成されていれば記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧謄写を求めることになります。

この権利の重要な特徴は、行使にあたって保有割合の下限が定められていない点です。1株しか保有していない株主でも請求できる、いわゆる単独株主権として整理されるのが一般的です。また、株式を6か月前から引き続き保有していることといった保有期間の要件も課されていません。相続で株主になった直後であっても行使できるということです。

もっとも、条文には条件がひとつ付いています。同項は、請求にあたって当該請求の理由を明らかにしてしなければならないとしています。

請求の理由はどこまで書けばよいか

請求の理由については、単に権利行使のためといった抽象的な記載では足りず、どの権利をどのように行使するために名簿を見る必要があるのかを具体的に書くことが求められると解されています。他方で、書いた理由を基礎づける事実が客観的に存在することまで請求者の側で立証しなければならない、とまでは考えられていません。

株式の売却を検討するにあたって自分の議決権割合を確認したい、他の株主と共同で株主提案を行うために株主構成を把握したい。こうした目的は、いずれも株主としての権利の確保または行使に関する調査に位置づけられます。目的をあいまいにせず正面から書いたほうが、結果として通りやすくなります。

会社が拒めるのは4つの場合だけ

会社法125条3項は、会社は前項の請求があったときは次のいずれかに該当する場合を除きこれを拒むことができない、という書き方をしています。原則は開示であり、拒絶できるのは限定された場合だけ、という構造です。

拒絶事由は次の4つです。第1に、請求者がその権利の確保または行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。第2に、請求者が会社の業務の遂行を妨げ、または株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。第3に、請求者が株主名簿の閲覧または謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。第4に、請求者が過去2年以内において、株主名簿の閲覧または謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるときです。

いずれも、名簿を株主としての目的以外に使おうとする場面を想定したものです。裏を返せば、自分の持分を確認して売却や権利行使を検討するという目的であれば、正面から請求できる場面が多いと考えられます。

なお、これとは別に、請求が権利の濫用にあたると評価される場合には認められないとした裁判例もあります。会社に嫌がらせをする目的で請求しているといった事情があれば、条文の4つに当たらなくても認められない可能性はあります。

競業者であることは拒絶理由ではなくなった

かつては、請求者が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、またはこれに従事する者であるときも拒絶事由とされていました。この規定は平成26年の会社法改正で削除されています。

削除の理由は、株主名簿に記載されているのは株主構成に関する情報にすぎず、競業者であることだけを理由に閲覧を拒めるとすると、この権利の意義が損なわれるという点にありました。同業種で事業を営んでいる株主であっても、それだけでは拒絶されないということです。

対比として押さえておきたいのが会計帳簿閲覧謄写請求権です。こちらは会社法433条2項3号に実質的競争関係の拒絶事由が今も残っています。会計帳簿には営業上の秘密が直接記載されるため、扱いが分けられているわけです。

会計帳簿閲覧謄写請求権との違い

株主名簿の閲覧請求と混同されやすいのが、この会社法433条の会計帳簿閲覧謄写請求権です。両者は要件がまったく異なります。

会計帳簿の閲覧謄写を請求するには、総株主の議決権の100分の3以上、または発行済株式(自己株式を除く)の100分の3以上を保有していることが必要です(定款でこれを下回る割合を定めることもできます)。少数株主権と呼ばれるゆえんです。拒絶事由も会社法433条2項に5つ定められており、株主名簿の場合より広く設定されています。

見られる情報の性質も違います。株主名簿から分かるのは誰がどれだけ持っているかであり、会計帳簿から分かるのは会社の財務の中身です。株主構成を知りたいのか、業績や資産の内容を知りたいのかによって、使う条文が変わると理解しておくとよいでしょう。

名簿以外に確認できる書類

自分の立場を把握するために使える請求権は、株主名簿だけではありません。

定款は、株主および債権者が営業時間内いつでも閲覧謄写を請求できます(会社法31条2項)。譲渡制限の内容、種類株式の定め、相続人等に対する売渡請求の定めの有無など、売却を考えるうえで欠かせない情報が載っています。

株主総会議事録も、株主および債権者が営業時間内いつでも請求できます(会社法318条4項)。過去の決議内容から、役員構成の変遷や重要な議案の可決状況をたどることができます。計算書類および事業報告等についても、株主および債権者は営業時間内いつでも閲覧等を請求できます(会社法442条3項)。

一方、取締役会議事録は扱いが異なります。株主はその権利を行使するため必要があるときに請求できますが(会社法371条2項)、監査役設置会社、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社では、営業時間内いつでもという部分が裁判所の許可を得てと読み替えられます(同条3項)。ハードルが一段高い書類だと覚えておくとよいでしょう。

これらに加えて、登記事項証明書は法務局で誰でも取得できます。株主の氏名は登記されませんが、発行済株式の総数、譲渡制限の定め、取締役会の設置の有無、役員の氏名などが分かります。まずは登記事項証明書を取り寄せて会社の輪郭をつかみ、そのうえで定款と株主名簿の閲覧を請求する。この順番で進めると、無駄な往復が減ります。

会社が応じないとき

請求の理由を明らかにした書面を送付したにもかかわらず、会社が回答しない、あるいは正当な理由を示さずに拒む、ということも起こります。

会社法976条は、法律の規定に違反して正当な理由がないのに閲覧謄写等を拒んだ場合を、100万円以下の過料の対象としています。ただし過料は取締役等の個人に科される制裁であって、それによって名簿が見られるようになるわけではありません。

実効性を確保する手段としては、閲覧謄写を求める仮処分の申立てや訴訟の提起が考えられます。この段階になると請求の理由の書き方や立証の組み立てが結論を左右しますので、弁護士に相談するのが現実的です。もっとも、まずは理由を明記した書面を内容証明郵便で送るところから始め、会社の反応を見るという進め方で足りることも少なくありません。

議決権割合を確定させることの意味

自分の持株比率を正確に押さえることは、単なる確認作業ではありません。

第1に、行使できる権利が割合によって変わります。会計帳簿の閲覧請求や株主総会の招集請求は3%、株主提案は1%または300個といった具合に、閾値ごとに手札が違います。

第2に、相続税評価の考え方に影響します。取引相場のない株式の評価では、株主とその同族関係者が持つ議決権の割合によって、原則的評価方式によるのか配当還元方式によるのかが分かれます。自分ひとりの割合だけでなく、親族を含めたグループ全体の割合を把握しておく必要があります。

第3に、売却の場面での位置づけが変わります。支配権に近づく持分なのか、経営に関与しない少数持分なのかによって、買い手から見た価値の考え方が変わってくるためです。

会社が情報を出してくれないからと諦める前に、法律上の手段が用意されていることを知っておいて損はありません。自分の株式がどういう内容のもので、どれだけの割合を占めるのかを確定させる。売却を検討するにしても持ち続けるにしても、そこが出発点になります。

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