非上場株式を売却できないケースとその対処法
執筆・運営:少数株ドットコム株式会社
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少数株主の権利
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非上場株式を手放したいのに手続きが前に進まない、というご相談は少なくありません。ただ、詳しく伺ってみると、制度として売れないというより、どこかの段階で止まっているだけというケースがほとんどです。会社法は、行き詰まりやすい場面のそれぞれについて、株主側が取れる手段をあらかじめ用意しています。ここでは代表的な場面を、対処法と期限をセットで整理します。
会社が譲渡を承認してくれない
まず前提として、会社が譲渡を承認しないこと自体は違法ではありません。譲渡制限の目的が、会社にとって望ましくない者が株主になるのを防ぐ点にある以上、不承認という判断はあり得るものとして制度に組み込まれています。
重要なのは請求の仕方です。承認請求(会社法136条・137条1項)を行う際、承認しない場合には会社または指定買取人に買い取ることを請求する旨を、あわせて明らかにしておくことができます(同法138条1号ハ・2号ハ)。この記載があると、会社が不承認の決定をしたときは、会社自身が対象株式を買い取るか、指定買取人を指定しなければなりません(同法140条1項・4項)。
逆にいえば、買取りの請求を併せてしていなければ、不承認になっても会社に買取義務は生じません。株式を持ち続けるだけの結果になります。承認が下りない可能性を少しでも見込むのであれば、請求書面にこの一文を落とさないことが最初の分かれ目です。すでに併記せずに不承認となっている場合は、改めて請求し直すことを検討します。
会社が請求に対して何の返事もしない
書面を送ったのに音沙汰がない、というのもよくある状況です。しかし会社法は、沈黙が株主に不利に働かない仕組みを置いています。
請求の日から2週間以内に会社が承認・不承認の通知をしなかった場合、会社は承認をしたものとみなされます(会社法145条1号。定款でこれを下回る期間を定めた場合はその期間、会社と請求者の間で別段の合意をした場合はそれによります)。
さらに、不承認の通知はしたものの、その通知の日から40日以内に会社が買い取る旨の通知をしなかった場合も、同じく承認したものとみなされます(同条2号。指定買取人が同通知の日から10日以内に所定の通知をした場合を除きます)。このほか、法務省令が定める場合にも承認とみなされる旨が置かれています(同条3号)。
つまり、放置は会社にとって最も不利な選択です。株主の側で必要なのは、起算日を証拠として残しておくことに尽きます。承認請求は内容証明郵便に配達証明を付けて送り、いつ到達したかを後から動かせない形にしておきます。
株主総会や取締役会がなかなか開かれない
承認機関が株主総会である会社では、会社が総会を開かない限り決議は出ません。ただし前述のとおり2週間が経過すれば承認とみなされますので、株主の側は待っていれば足りる場面も多くあります。
それでも会社を動かしたい、あるいは別の議題を諮りたいという場合には、株主総会の招集請求という手段があります。総株主の議決権の100分の3以上(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)を有する株主は、目的である事項と招集の理由を示して招集を請求できます(会社法297条1項)。公開会社でない会社では、6か月前から引き続き保有しているという要件は課されません(同条2項)。
請求の後、遅滞なく招集の手続が行われない場合、または請求があった日から8週間以内の日を総会の日とする招集通知が発せられない場合には、請求した株主が裁判所の許可を得て自ら総会を招集することができます(同条4項。この8週間についても、定款でこれを下回る期間を定めることができます)。
役員が退任したまま補充されておらず、そもそも会議体が成立しないという会社もあります。この場合、任期の満了または辞任により退任した役員は新たな役員が就任するまで役員としての権利義務を有するとされ(会社法346条1項)、それでも足りないときは、裁判所が利害関係人の申立てにより一時役員の職務を行うべき者を選任することができます(同条2項)。株主も利害関係人に当たり得ます。
売買価格の協議が進まない
会社または指定買取人から買取りの通知を受けた後、売買価格はまず当事者の協議によって定めます(会社法144条1項)。ここで折り合わないことは珍しくありません。
協議が調わない場合、会社または譲渡等承認請求者は、買取りの通知があった日から20日以内に、裁判所に対して売買価格の決定の申立てをすることができます(同条2項。指定買取人が買い取る場合も同条7項により同様の枠組みが準用されます)。裁判所は、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮して価格を判断します(同条3項)。
最大の落とし穴がこの20日です。期間内に申立てをせず、かつ期間内に協議も調わなかったときは、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格になると定められています(同条5項)。提示額に不満があっても、期限を過ごせば法定の算式に固定されてしまうということです。
もう一点、撤回の制限にも注意が必要です。買取りの通知を受けた後は、会社(指定買取人が買い取る場合はその指定買取人)の承諾を得なければ、承認請求を撤回することはできません(会社法143条)。思ったより安いからやめる、という選択が効かなくなります。なお会社は、買取りの通知をするにあたって1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額を供託し、供託を証する書面を交付しなければならないとされています(同法141条2項)。手続きに入る前に、自社株の価値についておおよその見当を付けておく意味は小さくありません。
名義や株券といった前提が整っていない
手続きの入口で止まる原因が、株主としての外形が整っていないことにある場合もあります。ここは2つに分けて見ておきます。
株主名簿の名義が自分になっていない
相続したまま被相続人名義で放置されている、贈与を受けたが書き換えていない。こうした状態では、会社は手続きの相手方として扱ってくれません。株式の譲渡は、取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載しなければ会社に対抗することができないとされており(会社法130条1項)、相続で取得した場合も、名簿が書き換わっていなければ会社は株主名簿上の株主を株主として扱うことになるからです。
相続の場合、押さえておきたいのは、相続は「譲渡」ではないという点です。相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した場合、その取得について会社の承認は不要とされており(会社法134条4号)、相続人は相続の事実を証する書面を添えて単独で名義書換を請求できるのが原則です(同法133条、会社法施行規則22条1項4号)。
遺産分割が済んでおらず複数の相続人の準共有になっている場合は、順序が一つ増えます。共有状態の株式については、権利を行使する者一人を定めて会社に通知しなければ、その株式についての権利を行使することができません(会社法106条)。売却の検討に入る前に、遺産分割か権利行使者の指定を先行させる必要があります。
株券発行会社なのに株券が見当たらない
見落とされやすいのが株券の問題です。定款に株券を発行する旨の定めが残ったままの会社は今も相当数あり、これは登記でも確認できます。
株券発行会社の株式の譲渡は、株券を交付しなければ効力を生じません(会社法128条1項)。株券が手元にないと、譲渡そのものが成立しないということです。
もっとも、公開会社でない株券発行会社は、株主から請求があるときまでは株券を発行しないことができるとされています(会社法215条4項)。そのため実務では、定款上は株券発行会社だが株券は一度も発行されていない、という状態が非常に多く見られます。この場合は、まず会社に対して株券の発行を請求するところから始めます。なお最高裁令和6年4月19日判決は、株券発行前にした株券発行会社の株式の譲渡について、譲渡当事者の間では株券の交付がないことをもって効力が否定されるものではないとし、譲受人は譲渡人の会社に対する株券発行請求権を代位行使できると判断しています。
発行済みの株券を紛失した場合は、株券喪失登録の制度を使います(会社法221条以下)。株券喪失登録がされた株券は、登録の日の翌日から起算して1年を経過した日に無効となり、会社は登録者に対して株券を再発行しなければなりません(同法228条)。ただし、登録が抹消された日か登録の日の翌日から1年を経過した日のいずれか早い日までの間は、その株券に係る株式について名義書換をすることができません(同法230条1項)。つまり、この期間は売却手続きが実質的に止まります。会社の側で定款を変更し、株券を発行する旨の定めを廃止すれば以後この問題は生じませんが(同法218条)、会社の協力が前提になります。
そもそも譲渡先が見つからない
最後に、意外と多いのがこれです。承認は下りそうなのに、買ってくれる相手がいない。
譲渡承認請求の手続きは、譲渡先が決まっていることを前提に組み立てられています。承認請求では、譲り渡そうとする譲渡制限株式の数と、譲り受ける者の氏名または名称を明らかにしなければならないとされているためです(会社法138条1号イ・ロ)。買い手が決まらない限り、そもそも承認請求という入口にすら立てません。
発行会社や経営者一族、取引先といった候補を当たるのが一般的な順序ですが、いずれからも色よい返事が得られないことも珍しくありません。その場合、非上場株式を自ら買い取る事業者に相談するという選択肢があります。買主が先に確定するため、譲受人が空欄のままでは手続きを始められないという最初の詰まりが解消され、承認請求以降の段取りに進めるようになります。
詰まったときに立ち返る3つの視点
ここまで見てきたケースは、突き詰めると3つのどれかに分類できます。請求の仕方が足りていないか(買取請求の併記漏れ、譲受人が未確定)、期限を意識していないか、前提となる名義や株券が整っていないか、です。
そして会社法が用意した手当ての多くには期限が付いています。承認とみなされるまでの2週間と40日、売買価格の決定を申し立てられる20日、総会の自ら招集につながる8週間、株券喪失登録から株券が無効になるまでの1年。いずれも待っているうちに過ぎてしまう長さです。特に売買価格の決定申立ての20日は、過ぎた時点で価格が法定の算式に固定されるため、後から取り返しがつきません。
価格に不服がある局面や、裁判所への申立てが視野に入る局面では、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。他方、行き詰まりの原因が譲渡先の不在にあるのなら、買主を先に確定させるだけで一気にほどけることもあります。どこで止まっているのかを見極めることが、対処法を選ぶ出発点になります。
