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非上場株式を相続したときの株主名簿の名義書換|流れと売渡請求のリスク

執筆・運営:少数株ドットコム株式会社

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手続き

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約8分
構成
6セクション

株式は相続で移るが、株主名簿は自動では変わらない

相続が開始すると、被相続人の財産に属した一切の権利義務は相続人に承継されます(民法896条)。非上場株式も例外ではなく、株主が亡くなった時点で、その株式はすでに相続人に移っています。

ところが、株主名簿の記載は自動的には変わりません。株主名簿には、株主の氏名または名称および住所、その株主が有する株式の数、株式を取得した日などが記載されますが(会社法121条)、会社が相続の発生を当然に知る手立てはなく、名簿上は被相続人が株主のまま残り続けます。

これが放置されると実害が出ます。会社が株主に対してする通知や催告は、株主名簿に記載された住所に宛てて発すれば足り、通常到達すべきであった時に到達したものとみなされます(会社法126条1項・2項)。名簿が古いままだと、株主総会の招集通知が被相続人の住所に送られ、相続人はそれを知らないまま総会が開かれることになります。配当の支払いについても、名簿上の株主を基準に処理されます。

売却を検討する場面でも同じです。名簿上の株主が被相続人のままでは、買主に対して自分が正当な権利者であることを示せず、話が前に進みません。相続に伴う手続きとして、株主名簿の名義書換は早い段階で片づけておくべきものです。

相続は「譲渡」ではない(会社法134条4号)

ここで多くの方が引っかかるのが、譲渡制限との関係です。非上場株式の多くには定款で譲渡制限が付いていますから、名義書換にも会社の承認が要るのではないか、と考えるのは自然なことです。

結論として、相続による取得それ自体に会社の承認は不要です。

株式を取得した者は会社に対して株主名簿記載事項の記載を請求できますが(会社法133条1項)、譲渡制限株式についてはこの規定が原則として適用されません(会社法134条本文)。ただし同条は四つの例外を置いており、その4号が、当該株式取得者が相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者であること、です。相続は個々の財産についての取引ではなく、地位をまるごと引き継ぐ一般承継であり、譲渡承認の対象から外されているわけです。

請求の方法にも例外があります。株主名簿記載事項の記載請求は、原則として名簿上の株主またはその相続人その他の一般承継人と共同してしなければなりませんが(会社法133条2項)、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合には単独で請求できます。会社法施行規則22条1項4号は、一般承継により株式を取得した者が当該一般承継を証する書面その他の資料を提供して請求したときを、この例外に挙げています。相続人は、相続の事実を証明する書類を添えて単独で名義書換を請求できるということです。

遺産分割が済むまでの準共有(民法898条・会社法106条)

相続人が複数いる場合、遺産分割が成立するまでの間、株式は相続人全員の準共有になります(民法898条)。この状態には、実務上とても厄介な制約が伴います。

共有に属する株式については、権利を行使する者を1人定めて会社に通知しなければ、その株式についての権利を行使することができません(会社法106条本文)。会社が同意した場合は例外とされていますが(同条ただし書)、最高裁平成27年2月19日判決は、指定および通知を欠いたまま権利が行使された場合において、その行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは、会社が同意をしても権利行使は適法にならないと判示しています。会社の同意さえあれば何とかなる、という理解は正確ではありません。

一方で同判決は、共有者間で権利行使者を定めるにあたっては、持分の価格に従いその過半数で決することができるとしています。相続人全員の合意までは要らないという点は、実務上の救いになります。とはいえ、相続人間で意見が割れていれば、この指定自体が難航します。議決権も配当の受領も宙に浮いたまま、会社の意思決定にだけ時間が過ぎていく、という状況が生まれます。

したがって、名義書換の前提として、誰がその株式を取得するのかを遺産分割で確定させておくのが最もすっきりした進め方です。分割が長引きそうであれば、少なくとも権利行使者の指定と会社への通知だけは先に済ませておくべきでしょう。

名義書換の実務的な流れ

第1に、取得者を確定させます。遺言があればその内容に従い、なければ遺産分割協議で誰がその株式を取得するかを決めます。

第2に、定款と登記事項証明書を取り寄せます。株主名簿管理人(名義書換代理人)を置いている会社では、請求先が会社ではなくその管理人になります。非上場の中小企業では置いていないことが多いものの、確認しておく価値はあります。あわせて、次の項で述べる相続人等に対する売渡請求の定めがないかも、この段階で見ておきます。

第3に、必要書類を揃えます。一般には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(または法定相続情報一覧図の写し)、相続人の戸籍謄本、遺言書または遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書などです。会社独自の請求書や同意書の書式を求められることもあるため、事前に問い合わせておくと二度手間を避けられます。

第4に、会社(または株主名簿管理人)に請求します。書類を提出し、株主名簿の記載を書き換えてもらいます。会社が正当な理由なく応じない場合には、名義書換を求める訴えなどの法的手段を検討することになりますので、その段階では弁護士に相談するのが現実的です。

なお、被相続人がどれだけの株式を持っていたのか分からない、他に誰が株主なのか把握できていない、という場合には、株主名簿の閲覧謄写請求(会社法125条)という手段があります。これは別の記事で扱っています。

定款に潜むリスク|相続人等に対する売渡請求(会社法174条〜177条)

名義書換の前に定款を確認すべき最大の理由が、この制度です。

会社法は、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、その株式を会社に売り渡すよう請求することができる旨を、定款で定めることを認めています(会社法174条)。定款にこの定めがある会社は、相続その他の一般承継があったことを知った日から1年を経過するまでの間に限り、株主総会の特別決議によって、請求する株式の数と相手方を定めたうえで売渡しを請求できます(会社法175条1項、176条1項・2項)。

問題は、この決議において、売渡請求の相手方となる相続人は議決権を行使できないという点です(会社法175条2項。その相続人以外の株主の全部が議決権を行使できない場合を除きます)。相続によって最大の議決権を承継したはずの相続人が、自分の株式を手放させる決議には加われない、という構図が生まれます。結果として、それまで少数派だった株主が決議を通し、会社の支配権が入れ替わってしまうことがあり、事業承継の実務では相続クーデターと呼ばれて警戒されています。

売渡請求がなされた場合、売買価格は会社との協議によって定めますが(会社法177条1項)、協議が調わないときは、請求があった日から20日以内に裁判所に売買価格の決定を申し立てることができます(同条2項)。この期間内に協議も調わず申立てもないときは、売渡請求はその効力を失います(同条5項)。相続人の側から見れば、動かなければ請求そのものが失効するということでもあり、この20日は双方にとって重い意味を持ちます。

会社の側にも制約はあります。買い取った株式は自己株式になるため、交付する金銭の額は分配可能額を超えてはならないという財源規制がかかります(会社法461条1項5号)。また、会社はいつでもこの請求を撤回することができます(会社法176条3項)。

いずれにせよ、定款にこの定めがあるかどうかで、相続人が置かれる状況はまったく変わります。書類を揃え始める前に、まず定款を確認してください。

名義書換を終えてから考える三つの出口

名義書換が済み、会社から株主として扱われる状態になって初めて、その株式をどうするかを自分の判断で決められるようになります。選択肢は大きく三つです。

ひとつは、持ち続けることです。配当があり、会社の状況にも納得しているのであれば、無理に動かす必要はありません。

ふたつめは、発行会社に買い取ってもらうことです。ただし、株主から請求されたからといって会社が買い取らなければならない法的義務は原則としてなく、交渉が成立するかどうかは相手次第です。また、発行会社への譲渡は税務上みなし配当の論点が生じます。相続で取得した株式については、一定の期間内の譲渡に限って課税関係が変わる特例も用意されていますので、この点は別の記事とあわせて確認してください。

みっつめは、第三者に売却することです。この場合は、改めて会社の譲渡承認手続き(会社法136条以下)を経ることになります。相続による取得に承認が不要でも、そこから先の譲渡は別の話です。承認請求から不承認時の買取り、価格決定までの流れには短い期限がいくつも設けられているため、事前に手順を把握しておくことをおすすめします。

相続税の申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。納税資金の確保が課題になるのであれば、名義書換の手続きと並行して、その株式が実際いくらで現金化できるのかを早めに把握しておくと、三つの選択肢を落ち着いて比べられます。

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