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譲渡制限株式を売却する手順|会社法136条〜145条の流れと3つの期限
執筆・運営:少数株ドットコム株式会社
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手続き
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- 7セクション
株式譲渡自由の原則と、その例外としての譲渡制限
株式は本来、自由に譲渡できるのが原則です(会社法127条)。株主は会社に対して出資の払戻しを求めることができないため、持分を他人に譲ることが投下資本を回収するほぼ唯一の手段だからです。
一方で会社法は、定款に株式の取得について会社の承認を要する旨を定めることを認めています(会社法107条1項1号。一部の種類の株式についてのみ定める場合は108条1項4号)。この定めが付いた株式が譲渡制限株式です。株主が少数で、人的な信頼関係が経営の前提になっている会社では、見知らぬ第三者が株主に加わることを避けたいという要請が強く、非上場会社の多くがこの定めを置いています。
売却を検討し始めたら、まず登記事項証明書(履歴事項全部証明書)と定款を取り寄せてください。株式の譲渡制限に関する定めは登記事項なので証明書で確認できますが、承認機関について定款で別段の定めを置いていないか、株券を発行する会社かどうかといった手続きの前提は、定款を見なければ分かりません。
承認を得ないまま譲渡契約を結んでしまった場合の扱いも押さえておきましょう。判例は、会社の承認を欠く譲渡制限株式の譲渡について、会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡の当事者間では有効であるとしています(最高裁昭和48年6月15日判決)。買主は会社に対して自分が株主であると主張できず、株主名簿の名義書換も受けられません(会社法130条1項、134条)。手続きを省いて先に進んでも、どこかで必ず止まります。
手続きの起点となる譲渡承認請求(会社法136条〜138条)
誰が請求するのか
譲渡承認請求には二つの入口があります。ひとつは、株式を譲り渡そうとする株主自身が、譲渡前に会社へ請求する方法です(会社法136条)。もうひとつは、すでに株式を取得した者が、取得後に会社へ請求する方法です(会社法137条1項)。
実務で先に検討されるのは前者ですが、株式譲渡契約を締結してから承認を求めるケースもあり、その場合は後者になります。ただし後者には制約があります。株式取得者からの請求は、法務省令で定める場合を除き、株主名簿に記載された株主またはその相続人その他の一般承継人と共同してしなければなりません(会社法137条2項)。単独で請求できるのは、名義書換を命じる確定判決を得た場合や競売により取得した場合など、会社法施行規則24条が定める限られた場面だけです。売主の協力が途中で得られなくなると手続きが止まりかねないため、譲渡契約の段階で承認請求への協力を義務づけておくのが安全です。
請求に必ず入れておきたい一文
請求では、譲り渡そうとする株式の数と、譲り受ける者の氏名または名称を明らかにします(会社法138条1号イ・ロ。株式取得者から請求する場合は同条2号イ・ロ)。
そして実務上いちばん重要なのが、同条1号ハ(株式取得者からの請求の場合は2号ハ)です。ここには、会社が承認しない場合に、会社または会社が指定する買取人がその株式を買い取ることを請求する旨を記載できます。この一文を入れておくかどうかで、不承認になったときの結末がまったく変わります。入れていれば会社側に買取義務が生じますが、入れていなければ、不承認の通知を受けて株式を持ち続けるだけで手続きが終わります。
会社の判断と、2週間という期限(会社法139条・145条1号)
承認するかどうかを決めるのは、取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会です(会社法139条1項)。同項にはただし書きがあり、定款で別段の定めを置くことも認められているため、代表取締役の決定に委ねている会社もあります。承認機関の違いが手続きに与える影響は別の記事で扱っています。
決定をしたら、会社は請求者に対してその内容を通知しなければなりません(会社法139条2項)。
ここで効いてくるのが、会社が請求の日から2週間以内にこの通知をしなかった場合、承認をしたものとみなされるという規定です(会社法145条1号。定款でこれを下回る期間を定めた場合や、会社と請求者との間で別段の合意をした場合は、それに従います)。会社が総会も取締役会も開かずに黙っていれば手続きが止まる、ということはありません。逆にいえば、この2週間の起算点をあとから証明できるようにしておくことが重要です。請求書は配達証明付きの内容証明郵便など、到達の日付が記録に残る方法で送っておくとよいでしょう。
承認された場合の残りの手続き
承認が得られたら、譲渡契約を実行し、代金の授受を済ませます。そのうえで忘れてはならないのが株主名簿の名義書換です。
株式の譲渡は、取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載しなければ、会社その他の第三者に対抗することができません(会社法130条1項。株券発行会社では、会社に対抗できないにとどまります)。譲渡制限株式についても、承認を受けていれば名義書換を請求できます(会社法134条1号・2号)。請求は、原則として譲渡人と譲受人が共同して行います(会社法133条2項)。
株主名簿には、株主の氏名または名称および住所、その株主が有する株式の数、株式を取得した日などが記載されます(会社法121条)。ここが書き換わって初めて、買主は会社から株主として扱われます。承認が取れた時点で終わりではない、という点は押さえておいてください。
不承認だった場合の買取り(会社法140条〜143条)
買取りを決めるのは株主総会の特別決議
会社が138条1号ハ・2号ハの請求を受けていて、かつ承認しない旨の決定をしたときは、その譲渡制限株式を買い取らなければなりません(会社法140条1項)。買い取る旨と買い取る株式の数は株主総会の決議で定める必要があり(同条2項)、これは特別決議です(会社法309条2項1号)。取締役会設置会社であっても、この決定だけは株主総会に上がります。なお、この決議において、請求をした株主自身は議決権を行使できません(会社法140条3項。その株主以外の株主の全部が議決権を行使できない場合を除きます)。
会社が自ら買い取る代わりに、買取人を指定することもできます(会社法140条4項)。この指定は、取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会の特別決議によります(同条5項、会社法309条2項1号。定款に別段の定めがある場合を除きます)。指定された者が指定買取人です。
会社自身が買い取る場合には、もうひとつ制約があります。自己株式の取得にあたるため、株主に交付する金銭の額は分配可能額を超えてはならないという財源規制がかかります(会社法461条1項1号)。会社に十分な分配可能額がないときは、指定買取人を立てる方向で調整されることになります。
買取通知には供託が伴う
買い取ることを決めた会社は、請求者に対してその旨を通知します(会社法141条1項)。この通知に先立って、会社は1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じた額を本店所在地の供託所に供託し、供託を証する書面を請求者に交付しなければなりません(同条2項)。指定買取人が買い取る場合も、同様の通知と供託が必要です(会社法142条)。
1株当たり純資産額は、法務省令が定める計算方法により、貸借対照表上の数値をもとに算出される額です(会社法施行規則25条)。会社の収益力や実態的な価値を反映した金額ではありませんので、この供託額をそのまま妥当な売買価格と考えるべきではありません。
株券発行会社の株式である場合は、請求者の側にも義務が生じます。供託を証する書面の交付を受けた日から1週間以内に株券を供託し、その旨を会社に通知しなければならず、これを怠ると会社は売買契約を解除することができます(会社法141条3項・4項)。
そして買取通知の側にも期限があります。会社は、承認しない旨の通知(139条2項の通知)の日から40日以内に買取通知をしなければならず、これを過ぎると譲渡を承認したものとみなされます(会社法145条2号)。指定買取人が買い取る場合は、この期間が10日です(会社法145条3号、会社法施行規則26条)。いずれも定款でこれを下回る期間を定めることができます。
買取通知の後は自由に降りられない
買取通知を受け取った後は、請求者は会社(指定買取人が買い取る場合は指定買取人)の承諾を得なければ、承認請求を撤回することができません(会社法143条1項・2項)。
つまり、価格が折り合わないからなかったことにしたい、という選択肢は、通知を受けた時点で自分の手を離れます。買取請求を付けて承認請求を出すということは、価格決定の手続きまで進む前提に立つことでもある、と理解しておいてください。
売買価格の決め方(会社法144条)
売買価格は、まず会社(または指定買取人)と請求者の協議によって定めます(会社法144条1項)。ここで折り合えば、その金額で決着します。
協議がまとまらない場合、当事者は買取通知があった日から20日以内に、裁判所に売買価格の決定を申し立てることができます(同条2項。指定買取人が買い取る場合は同条7項の読み替えによります)。条文上、協議が調わないことは申立ての要件とされていないため、協議と並行して申立ての準備を進めておくこともできます。
裁判所は、譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮して価格を決定します(同条3項)。これは訴訟ではなく非訟事件として扱われ、裁判所が事案に応じて価格を判断します。決定された額が売買価格となり(同条4項)、先に供託された金額は売買代金の全部または一部を支払ったものとみなされます(同条6項)。
注意が必要なのは、20日以内に申立てをしなかった場合です。その期間内に協議が調った場合を除き、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格になります(同条5項)。会社が供託した金額でそのまま確定する、ということです。何もしなければ会社側の水準に落ち着く仕組みになっているため、この20日は手続き全体で最も気を抜けない期間だといえます。
実務で押さえておきたいこと
一連の流れを期限だけで並べ直すと、承認請求から2週間、不承認通知から40日(指定買取人であれば10日)、買取通知から20日、という三つの区切りで構成されています。いずれも短く、相手方が動いてから準備を始めていては間に合いません。特に最後の20日は、株価算定の資料を揃え、申立ての要否を判断するには決して長い時間ではありません。
そしてこの手続きは、その性質上、会社や経営者一族との直接のやり取りを前提とします。親族間の関係が良好でない場合や、長く疎遠だった会社が相手の場合には、法律上の期限とは別に、心理的な負担が実務の進行を鈍らせることがあります。
進め方の選択肢として、先に第三者の買取業者を譲渡先として確定させ、株式譲渡契約を締結したうえで承認請求を行う、という順序もあります。この場合、買主が決まっているため138条1号ロに記載する譲受人が定まり、不承認になったときの買取請求(同号ハ)も含めて、最初から出口を二つ用意した状態で手続きに入れます。承認されれば買主へ譲渡し、不承認なら会社または指定買取人が買い取る、という構図です。会社との実務的なやり取りを専門家側に寄せられる点も含め、負担の分散という観点からは検討に値する進め方です。
