非上場株式の買取業者はどう選ぶ?信頼できる業者を見極めるポイント
執筆・運営:少数株ドットコム株式会社
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非上場株式の売却を検討して情報を集めていると、「株式買取業者には注意が必要」といった趣旨の注意喚起に行き当たることがあります。弁護士事務所などが発信しているもので、根拠のない話ではありません。取引所がなく、相場の目安も乏しく、売り手が制度をよく知らないまま1社と向き合うという構図は、それ自体が非対称だからです。
ただ、注意喚起を読んで「業者には頼まないほうがよい」と結論づけてしまうと、結局どこにも売れないまま少数株主であり続けることになります。必要なのは、印象で判断するのをやめて、確認できる事実で判断することです。ここでは、株主の立場から実際に確認できるチェックポイントを整理します。
前提:後から一方的に解除できる制度は用意されていない
最初に法制度上の前提を押さえておきます。訪問販売などで知られるクーリング・オフの制度は、この取引には使えません。
特定商取引法は、営業所等以外の場所で行われる物品の買受けを「訪問購入」として規制しており、法定の書面を受け取った日から8日以内であれば、申込みの撤回や契約の解除ができるとしています(特定商取引法58条の14)。しかし、この規制の対象となる物品からは政令で一定のものが除かれています。特定商取引に関する法律施行令34条は、自動車、家庭用電気機械器具、家具、書籍、有価証券、レコードその他の記録媒体を、除かれる物品として列挙しています。株式は有価証券ですから、訪問購入の規制の枠外です。
つまり、いったん売買契約を締結してしまえば、気が変わったという理由だけで一方的に白紙に戻すことはできないのが原則です。防御手段は契約前にしかありません。だからこそ、検討する時間を自分の側で確保できるかどうかが最初のチェックポイントになります。「今日中に返事がほしい」「この金額は今週まで」と締切を切ってくる相手は、株主から唯一の防御手段を取り上げようとしていることになります。持ち帰って家族や税理士に相談したいと伝えたときの反応は、その業者の姿勢を測るうえで最も分かりやすい材料です。
相手が「買主」なのか「仲介者」なのかをはっきりさせる
次に確認したいのは、相手の法的な立場です。自ら買主になる買取型と、買い手を探して引き合わせる仲介型では、利害の構造がまったく違います。
買取型の場合、相手は取引の当事者です。安く買えばそれだけ相手の利益になるという関係が、構造上どうしても存在します。これは悪いことではなく、当たり前の相対取引だという前提を持っておくべきだということです。だからこそ、後述する算定根拠の説明が重要になります。
仲介型の場合、相手は当事者ではなく、成約に対して手数料を受け取る立場です。ここには登録制度の裏づけがあります。有価証券の売買の媒介、取次ぎ又は代理を業として行うことは第一種金融商品取引業に当たり(金融商品取引法28条1項)、内閣総理大臣の登録を受けなければならないとされています(同法29条)。登録の有無は金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」で確認できます。同庁は2026年1月から、業種横断で登録状況を調べられる金融事業者一括検索機能の運用も開始しており、あわせて、無登録で金融商品取引業を行っているとして警告書を発した者の名称等も公表しています。
会社ごと譲り渡す事業承継型の相談であれば、中小企業庁が令和3年8月に創設したM&A支援機関登録制度も手がかりになります。中小M&Aガイドラインの遵守を宣言することが登録要件とされ、登録された支援機関は手数料体系とあわせてデータベースで公表されています。同ガイドラインは令和6年8月に第3版へ改訂され、手数料や提供業務の説明、利益相反に関する禁止事項、広告・営業の禁止事項などが具体化されました。
最低限、運営している法人の商号と所在地がサイト上に明示されているか、登記事項証明書で実在を確認できるかは、最初に見ておいてよい点です。
価格の算定根拠を説明できるか
金額そのものより、金額の出し方を尋ねるほうが情報量があります。
非上場株式の評価には、純資産価額方式、類似業種比準方式、DCF法といった代表的な方法があり、どれを採るかで結論は変わります(詳しくは別の記事で整理しています)。信頼できる相手であれば、どの考え方をベースにしたのか、どの資料に基づいたのか、少数株主が持つ株式であることをどう反映したのかを説明できるはずです。
ここで誤解しやすいのは、少数株主の株式に減価が織り込まれること自体は不自然ではない、という点です。数パーセントの持分では経営に影響を及ぼせず、買い手にとっても再び売却する当てがあるとは限りません。支配権がないこと、流動性がないことを理由とする調整は、実務上ごく一般的に行われます。問題は減価の有無ではなく、その理由を言葉にできるかどうかです。
もう一つ、資料の限界について正直に説明できるかも見ておきたいところです。少数株主は、会社の決算内容を自由に確認できるとは限りません。会計帳簿の閲覧謄写を請求するには、総株主の議決権の100分の3以上などの要件を満たす必要があります(会社法433条)。手元に十分な資料がない状態で精緻な評価ができないのは当然のことで、それを認めたうえで前提条件を示す相手のほうが、資料もないのに断定的な数字を口にする相手より信頼できます。
秘密保持と、発行会社にいつ伝わるのか
相談したことが発行会社や親族に伝わるかどうかは、少数株主にとって切実な問題です。関係が良好でないケースほど、この点が最初の懸念になります。
確認したいのは二つです。一つは、相談・査定の段階で受け取った情報を第三者に開示しない旨の取り決めがあるか。書面で秘密保持契約を結ぶのか、社内でどう管理するのかを尋ねれば、扱いの丁寧さは見えてきます。
もう一つは、どの時点で会社に知られることになるのかを正確に説明できるかです。譲渡制限株式を第三者に譲渡するには、発行会社の承認を得る手続きが避けられません(会社法136条以下)。したがって、売却を実行に移す段階では必ず会社に伝わります。これは構造上どうにもならないことで、「会社に一切知られずに売却できる」という説明があれば、その時点で正確ではありません。むしろ、査定の段階では伝わらず、譲渡承認請求の段階で初めて伝わるという順序を、具体的に説明できるかどうかが判断材料になります。
弁護士法との線引きを理解しているか
見落とされやすい一方で、実務の理解度がはっきり出るのがこの点です。
弁護士法72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁もしくは和解その他の法律事務を取り扱い、またはこれらの周旋をすることを業とすることを禁じています。
非上場株式の売却では、この線引きに触れる場面が実際にあります。たとえば、譲渡承認が得られず、会社または指定買取人との間で売買価格が折り合わない場合、裁判所に売買価格の決定を申し立てることになりますが(会社法144条)、これは非訟事件です。株主の代理人としてこの手続きを進められるのは弁護士です。「あなたに代わって会社と価格を交渉します」「価格決定の申立てを代行します」と持ちかける弁護士でない業者がいれば、その一点で判断がつきます。
一方で、業者が自ら買主となり、買主としての立場で発行会社に対して手続きを進めることは、他人の法律事務の取扱いではなく自分の権利の行使です。この二つはまったく別の話で、混同されやすいところでもあります。どちらの立場でどこまでできるのかを整理して説明できる相手であれば、実務を理解していると考えてよいでしょう。
譲渡制限株式の手続きに慣れているか
譲渡制限株式の売却は、契約を結んで終わりではありません。会社の承認を得て、株主名簿を書き換えるところまで到達して初めて完了します。ここでのつまずきは、そのまま入金の遅れや取引の頓挫につながります。
最初に、承認機関を確認しているかを見てください。譲渡等の承認をするか否かの決定は、取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会の決議によるとされています(会社法139条1項。定款に別段の定めがあればそれによります)。登記事項証明書や定款を確認したうえで見通しを説明できるかは、経験の有無が出るところです。
次に期間の扱いです。請求の日から2週間以内に会社が承認・不承認の通知をしなければ、承認したものとみなされます(会社法145条1号)。会社が黙って放置しても手続きが止まるわけではないという構造を織り込んで進行を組み立てているかは、聞いてみる価値があります。
そして名義書換です。株主名簿の名義書換は、原則として株式取得者が名簿上の株主と共同して請求しなければなりません(会社法133条2項)。株券発行会社であれば取得者が株券を提示して単独で請求できる例外もありますが(会社法施行規則22条2項1号)、株券を発行していない会社では、売主が最後まで手続きに協力する必要があります。裏を返せば、買主の側にも名義書換まで責任を持って進める体制がなければ困るはずです。どこまでを業者が担うのかを、契約前に確認しておくとよいでしょう。
もう一つ、意外に効いてくるのが発行会社との接し方です。発行会社の側にも、外部の買取業者に株式が渡ることへの警戒感があります。会社に対して高圧的にふるまう相手は、承認手続きを長引かせ、結果として売主の現金化を遅らせます。会社にどう説明し、どのように手続きを進めるつもりなのかを聞いておくことは、売主自身の利益にも直結します。
契約書で目を通しておきたい項目
最後に、契約段階で確認しておきたい項目を挙げます。
価格と支払時期の関係は必ず押さえてください。会社の承認取得を支払いの条件とするのか、承認が得られなかった場合に契約がどうなるのかは、契約書に書かれていなければ後で揉めます。承認が得られなかったときに、買主側だけが自由に離脱できる建て付けになっていないかも見ておきたい点です。
株主が求められる表明保証の範囲も確認してください。自分が株主であること、その株式に担保権が設定されていないことといった、自分で確かめられる範囲を超えて、会社の財務内容や偶発債務にまで保証を求められていないか。少数株主が会社の内情を保証できるはずがない以上、過大な表明保証は不合理です。
そのほか、手数料や実費の負担がどちらにあるか、契約後に条件を変更できる余地が一方にだけ与えられていないか、といった点にも目を通しておきましょう。査定額を知るために先に専属的な契約を結ばせるという順序になっている場合は、その理由の説明を求めてよいところです。
完璧な業者を探そうとするより、確認できることを確認し、複数の相手に当たって比較するほうが確実です。契約書のうち判断に迷う条項を弁護士に見てもらう費用は、取引金額と比べれば通常はごく小さな負担です。急かされて決めた条件は後から取り消せない一方で、確認に使った時間はほぼ確実に取り返せます。
