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非上場株式の売却先はどこがある?発行会社・第三者・買取業者・M&A仲介を比較

執筆・運営:少数株ドットコム株式会社

カテゴリ

比較・選び方

読了目安
約9分
構成
7セクション

上場株式であれば、証券会社に売り注文を出せば買い手は市場が見つけてくれます。非上場株式には、その市場がありません。そのため非上場株式を手放そうとする株主は、「いくらで売るか」を考える前に「誰に売るか」を自分で決めなければなりません。

選択肢は、大きく分けて発行会社、会社の関係者、専門の買取業者、M&Aの仲介者、そして証券会社が運営する制度の5つです。それぞれで、期待できる価格も、必要な時間も、手続きの負担も、そして手元に残る金額を左右する税金の扱いも変わります。順に整理します。

前提:譲渡制限株式は「売れない株」ではない

株式は、原則として自由に譲渡することができます(会社法127条)。ただし非上場会社の多くは、定款で「譲渡による取得について会社の承認を要する」と定めています(会社法107条1項1号、108条1項4号)。これがいわゆる譲渡制限株式です。

ここで誤解されやすいのが、譲渡制限は「譲渡してはいけない」という意味ではないという点です。会社の承認を経る必要があるというだけで、売却先を選ぶこと自体が禁じられているわけではありません。承認するかどうかを決めるのは、取締役会設置会社であれば取締役会、それ以外の会社であれば株主総会です(会社法139条1項。定款に別段の定めがあればそれに従います)。

以下で見る選択肢のうち、発行会社に買い取ってもらう場合を除けば、どの売却先を選んでもこの承認手続きは共通して必要になります。売却先による違いは、承認が要るかどうかではなく、価格・時間・税金・関係者への影響の側にあります。

選択肢1:発行会社に買い取ってもらう

会社が自社の株式を取得することを、自己株式の取得といいます。株主にとっては、探してくる必要のない、最も近くにいる買い手です。

手続きは、株主総会の決議で、取得する株式の種類・数、対価の内容と総額、取得することができる期間を定めるところから始まります(会社法156条1項)。株主全員に売却の機会を与える方式であれば普通決議ですが、売主となる特定の株主を指名する場合は特別決議が必要で(会社法160条1項、309条2項2号)、さらに他の株主から自己も売主に加えるよう請求される可能性が生じます(会社法160条3項)。ただし、公開会社でない株式会社が、相続その他の一般承継により株式を取得した者からその株式を買い取る場合には、この売主追加請求権の規定は適用されません(会社法162条)。

もうひとつ、会社側の制約として財源規制があります。取得の対価として交付する金銭等の帳簿価額の総額は、効力発生日における分配可能額を超えることができません(会社法461条1項)。剰余金が乏しい会社は、買う意思があっても買えないということです。

税金の扱いが他の選択肢と大きく違う

発行会社に売る場合、最も注意したいのが税金です。受け取った対価のうち、その株式に対応する資本金等の額を超える部分はみなし配当として配当所得に区分され、非上場株式の配当は総合課税の対象になります。総合課税は累進税率ですので、他の所得が多い方ほど負担が重くなります。第三者に売れば譲渡所得の申告分離課税だけで整理できるところが、発行会社に売ると配当所得と譲渡所得の二段構えになる、というのがこの選択肢の特徴です。

ただし、相続で取得した株式には重要な特例があります。相続または遺贈により財産を取得して納付すべき相続税額がある人が、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、相続税の課税対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡した場合には、みなし配当課税を行わず、対価の全額を譲渡所得の収入金額とすることができます(租税特別措置法9条の7)。譲渡する日までに所定の届出書を発行会社へ提出することが要件です。相続直後という限られた期間においては、発行会社への売却が有力な選択肢になり得ます。

「直接頼む」ことと「承認請求に添えて求める」ことは別物

なお、発行会社に買取りを打診しても断られることがあります。株主から請求されたからといって、会社に買取義務があるわけではないためです。これとは別に、第三者への譲渡承認請求を行う際、承認しないのであれば会社または指定買取人に買い取ってほしいと併せて請求しておくと(会社法138条1号ハ・2号ハ)、会社が承認しない場合には買取義務が生じます(会社法140条1項)。断られた場合に取りうる選択肢は、別の記事で詳しく扱っています。

選択肢2:経営者・他の株主・従業員持株会に売る

会社そのものではなく、社長個人や他の株主、あるいは従業員持株会に譲渡する方法です。会社の分配可能額に縛られず、みなし配当の論点も生じないため、税務上は譲渡所得の計算だけで整理できます。

一方で、買主は個人あるいは持株会ですので、資金力には自ずと限りがあります。金額が大きくなるほど成立しにくくなるのが実情です。また価格が身内の交渉で決まるため、これまでの関係性が条件に影響しやすく、その後の親族関係に響くこともあります。持株会については、規約であらかじめ譲渡価格の算定方法が定められていることがあり、その場合は交渉の余地が乏しくなります。まず規約を取り寄せて確認するところからです。

選択肢3:非上場株式の買取業者に売る

業者自身が買主となって株式を取得する方式です。買い手を探す期間が発生しないため、査定から成約までのスピードが速く、成約するかどうか不透明なまま待たされることがありません。

発行会社ではなく第三者への譲渡ですので、みなし配当の論点が生じず、譲渡所得として整理できます。譲渡制限株式であれば会社の承認は必要ですが、譲渡先が確定した状態で承認請求ができるため、手続きの見通しを立てやすいという利点があります。承認されればそのまま売却が成立し、承認されなければ、買取りの請求を併せてしていれば会社または指定買取人が買い取ることになります(会社法140条1項)。どちらに転んでも出口がある、という構図をつくれるわけです。会社との一対一の交渉に時間をかけずに済む点も、実務上は小さくありません。

留意点としては、業者は買い取った後の保有リスクを自ら負うため、価格は相対の交渉で決まるという点があります。市場価格という共通のものさしがない以上、査定の根拠を確認し、可能であれば複数の見積もりを比較したうえで判断するのが健全です。

選択肢4:M&A仲介・FA、公的な支援機関

会社の支配権が動く規模の取引であれば、M&Aの仲介会社やファイナンシャル・アドバイザー(FA)を使う道があります。中小企業のM&Aについては、中小企業庁が中小M&Aガイドラインを公表しており、支援機関の情報開示や手数料の説明などについての行動指針が示されています。あわせて、仲介手数料等が補助の対象となるM&A支援機関登録制度も設けられています。公的な相談先としては、全国47都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターがあり、事業承継やM&Aのマッチング支援を原則無料で受けられます。

ただしこの選択肢は、少数株主が単独で持ち込む案件としては成立しにくいのが実情です。買い手が求めるのは通常、会社の経営権を伴う株式であり、数パーセントの少数持分だけを買いたいという買い手は多くありません。仲介会社の報酬体系にも、最低金額が設定されていることが一般的です。

現実的に検討する価値があるのは、他の株主と足並みを揃えて、過半数あるいは全株をまとめて売却できる場合です。相続によって株式が分散した親族間で、まとめて手放すという合意ができるのであれば、この道が最も高い価格につながる可能性があります。逆に、他の株主の協力が得られる見込みがないのであれば、早い段階で他の選択肢に切り替えたほうが時間の無駄が少なくなります。

選択肢5:証券会社の株主コミュニティ制度

日本証券業協会が2015年5月に創設した制度で、証券会社が非上場株式の銘柄ごとに株主コミュニティを組成し、そこに参加する投資者に対してのみ投資勧誘を行うことができる仕組みです。地域に根ざした企業の資金調達を支え、非上場株式の取引・換金のニーズに応えることを目的としています。

自社の株式が対象であれば、証券会社を通じて売買できるという点で、市場に近い形になります。ただし、運営会員となっている証券会社が組成した銘柄に限られるため、対象になっていなければ利用できません。まず銘柄が対象かどうかを確認するところからになります。

手取りと期限で比べる

最後に、選択肢を絞り込むための視点を3つ挙げておきます。

ひとつめは、提示された売却価格ではなく手取りで比べることです。発行会社への売却はみなし配当が絡むため、同じ金額でも第三者への売却と手元に残る額が変わり得ます。相続した株式であれば、租税特別措置法9条の7のほか、納めた相続税額の一部を取得費に加算できる特例(租税特別措置法39条)も検討の対象になります。実際の税額は取得費を証明できるかどうかや他の所得の状況によっても変わりますので、金額が大きい場合は税理士に試算を依頼したうえで比較することをおすすめします。

ふたつめは、期限の確認です。相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内。上記2つの特例は、いずれも相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までが期限です。また譲渡承認請求から会社の買取りに至った場合、売買価格の決定を裁判所に申し立てられるのは、買取りの通知があった日から20日以内です(会社法144条2項)。動ける期間には区切りがあり、迷っている間に選択肢が減っていく構造になっています。

みっつめは、優先順位をはっきりさせることです。価格を最大化したいのか、早く確実に現金化したいのか、会社や親族との関係をこれ以上こじらせたくないのか。この3つは同時には満たしにくく、どれを優先するかで選ぶべき売却先が変わります。まずは自分の株式がいくらで現金化できるのかという相場観を持ったうえで、比較検討していただくのがよいでしょう。

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