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みなし配当とは?発行会社への株式譲渡で生じる税務上の扱い

執筆・運営:少数株ドットコム株式会社

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はじめに・用語解説

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約9分
構成
6セクション

「みなし配当」という言葉は、非上場株式を発行会社に買い取ってもらう場面で必ずといってよいほど登場します。株主総会で配当の決議がされたわけでもないのに、なぜ配当という名前がつくのか。ここでは概念そのものの意味と、その背後にある考え方を整理します。

みなし配当とは何か

みなし配当とは、会社法上の配当の手続きを経ていなくても、税法上は配当を受け取ったものとして扱われる金額のことです。

根拠となるのは所得税法25条1項です。同項は、法人の株主等がその法人の同項各号に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額および金銭以外の資産の価額の合計額が、その法人の資本金等の額のうち交付の基因となった株式または出資に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額に係る金銭その他の資産を配当とみなす、と定めています。

条文の構造をほどくと、次の一行に集約されます。

会社から受け取った金額 − 自分の株式に対応する資本金等の額 = みなし配当

つまり、受け取った金額のうち、もともと出資した元手の払い戻しにあたる部分を超えた分が、配当とみなされるということです。法人側の課税関係については法人税法24条に対応する規定が置かれていますが、個人株主の立場で読むときは所得税法25条を見れば足ります。

なぜ「配当とみなす」のか

この制度を理解する鍵は、法人の純資産を税務上どう二分しているかにあります。

税務では、法人の純資産を「資本金等の額」と「利益積立金額」に分けて管理しています。資本金等の額は、株主から出資を受けた元手に相当する部分です(法人税法2条16号)。利益積立金額は、会社が事業で稼いで社内に留保してきた部分です。

株主が会社から金銭を受け取るとき、その中身が元手の返還なのか、稼いだ利益の分配なのかによって、課税されるべきかどうかは変わります。元手が戻ってきただけであれば、それは投資の回収であって新たな所得ではありません。他方、留保されていた利益が株主に渡ったのであれば、実質的に配当と同じです。

そこで税法は、形式が配当決議でなくても、実質的に利益の分配にあたる部分を配当として扱うことにしています。この規定がなければ、配当を出さずに自己株式の取得や減資という形をとるだけで配当課税を避けられてしまいます。みなし配当は、形式ではなく実質で課税関係を揃えるための仕組みだといえます。

みなし配当が生じる7つの事由(所得税法25条1項)

みなし配当は、どんな場面でも生じるわけではありません。所得税法25条1項は、次の7つの事由を限定列挙しています。

1号は、その法人の合併です。ただし法人税法2条12号の8に規定する適格合併は除かれます。株主が合併に際して存続会社の株式以外の資産(合併交付金など)を受け取る場面が典型です。

2号は、その法人の分割型分割です。こちらも法人税法2条12号の12に規定する適格分割型分割は除かれます。

3号は、その法人の株式分配です。法人税法2条12号の15の3に規定する適格株式分配は除かれます。

4号は、その法人の資本の払戻し、または解散による残余財産の分配です。減資に伴って株主に金銭を返す場合や、会社を清算して残った財産を分ける場合が該当します。

5号は、その法人の自己の株式または出資の取得です。金融商品取引所の開設する市場における購入による取得その他の政令で定める取得は除かれます。上場株式を市場で売ったときにみなし配当の話が出てこないのは、この括弧書きがあるためです。非上場株式を発行会社に直接買い取ってもらう場合は、この除外に当たりません。

6号は、その法人の出資の消却、出資の払戻し、社員その他の出資者の退社もしくは脱退による持分の払戻し、または株式もしくは出資をその法人が取得することなく消滅させることです。

7号は、その法人の組織変更です。組織変更に際して、その法人の株式または出資以外の資産を交付したものに限られます。

いずれも、法人自身が株主に対して財産を交付する場面である点が共通しています。裏を返せば、株式を第三者に売っただけの取引はこの7つのどれにも当たらず、みなし配当は生じません。売却先が誰かによってこの論点の有無が決まるのは、そのためです。

金額の計算:1株当たりの資本金等の額が起点になる

計算のうえで実際に問題になるのは、自分の株式に対応する資本金等の額をどう求めるかです。

自己株式の取得の場合、所得税法施行令61条2項は、その取得の直前の資本金等の額を直前の発行済株式等の総数で除して1株当たりの金額を出し、これに株主がその直前に有していた取得対象の株式数を乗じて計算するとしています。種類株式を発行している会社については、その種類の株式に係る種類資本金額をその種類の株式の総数で除する方法によります。

架空の設例で考えてみます。資本金等の額が5,000万円、発行済株式総数が10万株の会社であれば、1株当たりの資本金等の額は500円です。この会社の株式を2,000株持つ株主が、1株2,000円・合計400万円で発行会社に買い取ってもらったとします。

資本金等の額に対応する部分は500円×2,000株=100万円。受け取った400万円との差額300万円が、みなし配当になります。

ここで注意したいのは、1株当たりの資本金等の額は、株価とも、かつての額面とも、貸借対照表上の資本金とも一致するとは限らないという点です。資本金等の額は税務上の概念であり、過去に増資や自己株式の取得、組織再編を経てきた会社ほど、会計上の数字とはずれていきます。自分の株式にどれだけの資本金等の額が対応するのかは、発行会社の法人税申告書の別表五(一)を見なければ正確にはわかりません。株主の側から事前に精密に見積もるのは難しい数字だ、というのが実務の実感です。

少数株主が実際に出会うのは自己株式の取得

7つの事由のうち、非上場会社の少数株主が現実に直面する可能性が高いのは、5号の自己株式の取得です。

会社に株式を買い取ってもらうという選択は、非上場株式の出口としてよく検討されます。相続で株式を承継したものの経営に関わる予定がない場合や、譲渡制限株式の譲渡承認が得られず会社が買取人になる場合など、発行会社が買主になる場面は珍しくありません。そしてそのすべてが、税務上は自己株式の取得にあたります。

このとき、受け取った対価はひとつの取引でありながら二つの所得に分かれます。資本金等の額に対応する部分は株式の譲渡対価として譲渡所得の計算に回り、それを超える部分はみなし配当として配当所得になります。上の設例でいえば、100万円が譲渡所得の収入金額、300万円が配当所得です。

非上場株式の配当は、上場株式等と異なり申告分離課税を選択できません。給与や事業所得と合算する総合課税の対象になるため、超過累進税率が適用されます。一律20.315%の申告分離課税で完結する譲渡所得と比べると、他の所得が多い方ほど負担が重くなりやすい構造です。

また、みなし配当を交付する発行会社には源泉徴収義務があります。上場株式等以外の配当等については20.42%(地方税の源泉徴収はありません)の税率で所得税および復興特別所得税が徴収されますので、合意した金額がそのまま入金されるわけではない点も、事前に理解しておく必要があります。

みなし配当が生じたときの申告と、注意しておきたい点

みなし配当は配当所得ですので、確定申告では総合課税として申告するのが原則です。総合課税の適用を受けた配当所得には配当控除があり、課税総所得金額等が1,000万円以下の場合には、剰余金の配当等に係る配当所得の金額の10%相当額を所得税額から差し引くことができます(所得税法92条。1,000万円を超える場合は、超える部分に対応する控除率が下がります)。

配当所得には少額配当の申告不要制度もあります。一回に支払を受けるべき配当等の金額が「10万円×配当計算期間の月数÷12」以下であれば、所得税については確定申告をしないことを選択できます。ただしこれは所得税の話であり、住民税では他の所得と総合して課税されるため、別途申告が必要です。所得税で申告不要を選んだから住民税も申告しなくてよい、ということにはなりません。もっとも、発行会社への株式売却で生じるみなし配当は金額が大きくなることが多く、この枠に収まる場面は限られます。

そしてもうひとつ、実務で見落とされやすいのが譲渡側の損失です。発行会社への売却では、譲渡所得の収入金額とされるのは資本金等の額に対応する部分だけですので、取得費のほうが大きければ譲渡所得は赤字になります。しかし一般株式等に係る譲渡所得等の赤字は、他の一般株式等の譲渡益から控除することはできても、配当所得を含む他の各種所得から差し引くことはできず、翌年以降への繰越控除も原則としてできません。みなし配当には課税され、譲渡側の損失は使えないまま、という結果が起こり得ます。

最後に、通常の配当との違いを整理しておきます。通常の配当は、会社が株主総会等の決議に基づいて剰余金を分配するもので、株主にとっては受け取る前から金額の見当がつきます。これに対してみなし配当は、決議があったかどうかとは関係なく、法人から財産の交付を受けたという事実に着目して自動的に生じます。株主が何かを間違えたから発生するものではなく、取引の形を選んだ時点で決まる、と理解しておくのが正確です。

なお、相続で取得した非上場株式を発行会社に譲渡する場合には、一定の要件と期限のもとでみなし配当課税を行わない特例が設けられています(租税特別措置法9条の7)。要件・期限・届出の手続きは別の記事で詳しく扱っていますので、相続した株式の売却を検討している方はあわせてご覧ください。

みなし配当の金額を見積もるには発行会社側の情報が欠かせず、税負担もその年の他の所得の状況によって変わります。発行会社への売却を検討する段階で、税理士に試算を依頼しておくと判断を誤りにくくなります。

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