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非上場株式を売却したときの税金|譲渡所得とみなし配当、何が違う?
執筆・運営:少数株ドットコム株式会社
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税金
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非上場株式を売却したときの税金は、「誰に売るか」で計算の組み立てが変わります。同じ金額で売っても手元に残る金額が変わることがあるため、売却先を決める前に押さえておきたい論点です。ここでは第三者に売る場合と発行会社に買い取ってもらう場合を対比しながら、実務で見落とされやすい点まで整理します。
第三者に売却した場合:譲渡所得として一律20.315%
発行会社以外の第三者に譲渡した場合、売却益は株式等に係る譲渡所得等として、給与など他の所得とは分けて計算する申告分離課税の対象になります(租税特別措置法37条の10)。非上場株式は税制上「一般株式等」に区分され、上場株式等とは別枠で計算します。
計算式そのものはシンプルです。総収入金額(譲渡価額)から必要経費(取得費と譲渡に要した委託手数料等)を差し引いた金額が、譲渡所得等の金額になります。
税率は所得税15%・住民税5%の合計20%で、これに復興特別所得税(各年分の基準所得税額に2.1%を乗じた額。平成25年分から令和19年分まで)が加わり、合わせて20.315%です。売却益がいくら大きくなっても税率が上がらない点が、この課税方式の最大の特徴といえます。
注意したいのは、非上場株式の譲渡には源泉徴収の仕組みがないことです。証券会社の特定口座で完結する上場株式と違い、売却益が出たら自分で確定申告をする必要があります。
もうひとつ、取得費の証明も実務上の壁になりがちです。何十年も前に取得した株式や、相続で引き継いだ株式では、いくらで取得したのかを示す資料が残っていないことが少なくありません。この場合、その株式の譲渡による収入金額の5%相当額を取得費として計算することが認められています(租税特別措置法関係通達37の10・37の11共-13)。ただしこれは資料が出てこないときの取扱いであって、実際の取得費のほうが高ければ税負担は重くなります。払込みや購入の記録が残っていないか、まずは探してみる価値があります。
たとえば、取得費300万円の株式を1,000万円で売却し、譲渡に要した費用が50万円かかったという設例で考えると、譲渡所得等の金額は650万円、税額はその20.315%でおよそ132万円という計算になります。
発行会社に売却した場合:ひとつの取引が二つの所得に分かれる
一方、発行会社自身に買い取ってもらう場合(自己株式の取得)は、扱いがまったく異なります。
所得税法25条1項は、法人の株主等が同項各号に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その合計額がその法人の資本金等の額のうち交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分を配当とみなすと定めています。自己の株式または出資の取得は、この5号に掲げられた事由のひとつです。
したがって、発行会社に株式を買い取ってもらうと、受け取った対価は次の二つに分解されます。
ひとつは、その株式に対応する資本金等の額の部分です。これは元手の払い戻しにあたるものとして、株式の譲渡対価として譲渡所得の計算に回ります。
もうひとつは、それを超える部分です。こちらがみなし配当で、配当所得に区分されます。非上場株式の配当は上場株式等と違って申告分離課税を選べないため、給与や事業所得と合算する総合課税の対象になります。総合課税は超過累進税率のため、他の所得が多い方ほど、譲渡所得課税より税負担が重くなる可能性があります。
さらに、みなし配当を交付する発行会社には源泉徴収義務があります。上場株式等以外の配当等については20.42%(地方税の源泉徴収はありません)の税率で所得税および復興特別所得税が徴収されるため、契約書に書かれた金額がそのまま入金されるわけではありません(所得税法181条・182条)。
配当所得については、確定申告で総合課税の適用を受けた場合に配当控除があります。課税総所得金額等が1,000万円以下の場合、剰余金の配当等に係る配当所得の金額の10%相当額を所得税額から差し引くことができます(所得税法92条。1,000万円を超える場合は、超える部分に対応する控除率が下がります)。累進税率の高さをいくらか緩和する仕組みですが、これで総合課税が常に有利になるわけではありません。
設例で見る分解のしかた
架空の設例で計算の流れを追ってみます。資本金等の額が5,000万円、発行済株式総数が10万株の会社であれば、1株当たりの資本金等の額は500円です。この会社の株式を2,000株持つ株主が、1株2,000円・合計400万円で発行会社に買い取ってもらったとします。
資本金等の額に対応する部分は500円×2,000株=100万円。これが譲渡所得の収入金額になります。残る300万円がみなし配当として配当所得に区分され、源泉徴収額は300万円×20.42%=61万2,600円という計算です。
ひとつの取引が二つの所得に分かれ、それぞれ別の税率体系で課税される。これが発行会社への売却の基本構造です。
見落とされやすい落とし穴:譲渡損失が切り捨てられることがある
上の設例には、あまり知られていない続きがあります。
譲渡所得の計算で取得費を差し引けるのは、あくまで譲渡所得の収入金額とされた部分(設例では100万円)からです。仮にこの株式の取得費が150万円だったとすると、譲渡所得は50万円の赤字になります。
ところが、一般株式等に係る譲渡所得等の赤字は、他の一般株式等の譲渡益から控除することはできても、給与所得など他の各種所得の金額から差し引くことはできません。翌年以降への繰越控除も、原則として認められていません(特定中小会社の株式など一部の例外を除きます)。
つまり、みなし配当300万円には総合課税がかかる一方で、譲渡側で生じた50万円の損失は使い道がないまま切り捨てられる、という結果になり得ます。取得費が高い株式ほど、この構造の影響を受けやすいことになります。
相続した株式には特例がある(租税特別措置法9条の7)
ここまでを読むと発行会社への売却は不利に見えるかもしれませんが、相続で取得した株式には重要な特例が用意されています。
相続または遺贈により財産を取得し、納付すべき相続税額がある個人が、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、相続税の課税対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡した場合には、対価が資本金等の額に対応する部分を超えていても、その超える部分について所得税法25条1項の規定を適用しないこととされています(租税特別措置法9条の7第1項)。
結果として、受け取った対価の全額が非上場株式の譲渡所得の収入金額となり、申告分離課税で完結します。みなし配当が生じないため、発行会社側の源泉徴収も不要になります。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内とされていますので、この特例が使えるのは実質的に相続開始からおよそ3年10か月の間ということになります。
手続きも押さえておく必要があります。適用にあたっては、株式を発行会社に譲渡する時までに「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」を発行会社に提出しなければなりません(発行会社はこれを翌年1月31日までに税務署長に提出します)。売却を済ませてから気づいても遡って適用することはできませんので、相続した株式の売却を検討している方は、この順序を先に確認しておくことが大切です。
取得費加算の特例も併用できる(租税特別措置法39条)
相続した株式については、もうひとつ「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」(取得費加算の特例)があります。相続や遺贈で財産を取得して相続税が課税された人が、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合、納めた相続税額のうち一定額を取得費に加算できる制度です(租税特別措置法39条)。
加算できる金額は、その人の相続税額に、譲渡した株式の相続税評価額が財産全体に占める割合を掛けて計算します(分母は、取得財産の価額・相続時精算課税適用財産の価額・暦年課税分の贈与財産の価額の合計です)。ただし、この特例を適用しないで計算した譲渡益の金額が上限になります。
国税庁は、9条の7の特例とこの取得費加算の特例を併用することも可能としています。この点は実益が大きいところです。取得費加算はあくまで譲渡所得の計算上の特例なので、対価の大半がみなし配当になってしまうと、譲渡益そのものが小さくなり加算の効果も頭打ちになります。9条の7で対価の全額を譲渡所得の収入金額に取り込んだうえで取得費加算を重ねれば、両方の効果を活かせる形になります。
いずれの特例も、一定の書類を添えて確定申告をすることが適用の条件です。株式については「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」などの添付が必要になります。
売却先を決める前に確認しておきたいこと
整理すると、押さえるべき点は次のようになります。
第三者への売却は、所得税法25条1項が定める事由のいずれにも当たらないため、みなし配当は生じません。譲渡所得の計算だけで完結し、税率は一律20.315%です。
発行会社への売却は、資本金等の額に対応する部分とそれを超える部分に分かれ、後者はみなし配当として総合課税の対象になります。他の所得が多い方ほど、税負担が読みにくくなります。譲渡側で損失が出ても他の所得と通算できない点にも注意が必要です。
ただし相続で取得した株式であれば、期限内に届出書を出すことで発行会社への売却でもみなし配当課税を回避でき、取得費加算との併用も可能です。
判断に必要な材料は、その会社の1株当たりの資本金等の額、自分の取得費、その年の他の所得の見込み、そして相続株式なら期限までの残り時間です。これらが揃わないと、どちらの売却先が有利かは決まりません。
なお、税率や特例の要件は制度改正によって変わることがあり、実際の税額は取得費を証明できるかどうかや他の所得の状況によっても変わります。ここに書いた内容は一般的な整理ですので、具体的な税額の判断は税理士等の専門家にご確認ください。
