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非上場株式の「買取」と「仲介」は何が違う?株主から見た比較
執筆・運営:少数株ドットコム株式会社
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「非上場株式を売りたい」と考えたとき、多くの方が最初につまずくのは価格ではなく、そもそもどこに持ち込めばよいのかという点です。上場株式であれば証券口座から売り注文を出せば済みますが、非上場株式にはその窓口がありません。
窓口として現実に選択肢になるのは、大きく「仲介型」と「買取型」の2つです。これに加えて、発行会社そのものに買い取ってもらう道もあります。それぞれ根拠となる仕組みも、かかる時間も、価格の決まり方も異なります。
そもそも非上場株式には売り先を探す仕組みがない
まず前提として押さえておきたいのは、非上場株式には取引所も、それに準じた一般向けの流通市場もないという点です。
さらに、証券会社が顧客に対して非上場株式(自主規制上の用語では店頭有価証券)の投資勧誘を行うことは、日本証券業協会の自主規制規則により、長らく原則として認められてきませんでした。例外的な枠組みとして、2015年5月に創設された株主コミュニティ制度などが用意されてきた経緯があります。近年は成長資金の供給という観点から、特定投資家向けの取引を認める方向で規則の整備が進んでいますが、いずれにしても、個人が保有する非上場株式を最寄りの証券会社の窓口に持ち込んで売る、という道が開かれているわけではありません。
つまり売り手は、自分で相手を探すか、探してくれる誰かを見つけるか、直接買ってくれる誰かを見つけるしかありません。ここから仲介型と買取型という2つの型が分かれます。
仲介型:買い手を探してもらう
仲介型は、業者が売買の当事者にはならず、買い手候補を探して売り手に引き合わせる方式です。M&Aの世界でいうフィナンシャル・アドバイザー(FA)や仲介業者と同じ立ち位置になります。
この形態には登録制度の裏づけがあります。有価証券の売買の媒介、取次ぎ又は代理を業として行うことは第一種金融商品取引業に当たり(金融商品取引法28条1項)、内閣総理大臣の登録を受けなければならないとされています(同法29条)。仲介を掲げるサービスを検討する際には、この登録の有無が確認の手がかりになります。登録業者は金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」で確認でき、無登録で金融商品取引業を行っているとして警告書が発せられた者の名称等も同庁が公表しています。
また、会社ごと譲り渡すような事業承継の文脈であれば、中小企業庁が令和3年8月に創設したM&A支援機関登録制度も参考になります。中小M&Aガイドラインの遵守を宣言することが登録要件とされ、登録された支援機関は手数料体系とあわせてデータベースで公表されています。同ガイドラインは令和6年8月に第3版へ改訂され、手数料や提供業務の説明、利益相反に関する禁止事項、広告・営業の禁止事項などが具体化されました。
仲介型の長所は、複数の買い手候補を比較できる可能性がある点です。買いたい相手が複数現れれば、価格は当然に上がりやすくなります。
短所は、成約するかどうかも、いつ成約するかも読めないことです。少数株主が持つ数パーセントの株式は、経営権にも十分な配当にも直結しないため、そもそも買いたい第三者が現れないことが珍しくありません。加えて、買い手が現れるまでは、後述する会社法上の手続きに着手すること自体ができません。
買取型:業者自身が買主になる
買取型は、業者が自己の資金でその株式を買い取る方式です。提示された価格がそのまま売買条件になり、買い手を探す期間は発生しません。
長所は、時期と結果の見通しが立つことです。査定額の提示を受けた時点で、売るか売らないかを判断できます。相続税の申告・納付の期限のように動かせない期日を抱えている場合、この見通しの立ちやすさは実務上大きな意味を持ちます。買主が最初から確定しているため、後述する譲渡承認の手続きに、契約締結後すぐ着手できるという違いもあります。
短所は、価格が1社との相対交渉で決まる点です。仲介型のように複数の買い手が競り合う構造にはならないため、提示額が妥当かどうかを判断する材料は自分の側で用意する必要があります。複数の買取業者から査定を取る、相続税評価額を税理士に確認しておく、といった準備が効きます。
発行会社に買い取ってもらう道と、その限界
第三の選択肢として、発行会社自身に買い取ってもらう道もあります。ただしこれは、業者に頼む2つの型とは性質が違います。
まず、株主から頼まれたからといって、会社に買取義務が当然に生じるわけではありません。義務が生じるのは、第三者への譲渡承認請求にあわせて買取りも請求し(会社法138条1号ハ・2号ハ)、会社がその譲渡を承認しなかった場合です(会社法140条1項)。
そして、会社が買い取る道には財源の壁があります。この買取りによって株主に対して交付する金銭の額は、その行為が効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならないとされています(会社法461条1項1号)。剰余金の薄い会社では、価格の話し合い以前に、買い取れる金額そのものに上限がかかります。
手続面でも、会社が自ら買い取る場合には、買い取る対象株式の種類と数を株主総会の決議で定める必要があります(会社法140条2項。同法309条2項1号により特別決議です)。会社が自ら買わずに指定買取人を指定することもでき、その決定は定款に別段の定めがなければ、取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会によります(会社法140条4項・5項)。
なお、発行会社が買主となる場合は、受け取った対価の一部がみなし配当として扱われうる点でも、第三者に売る場合と税務上の取扱いが異なります。この点は別の記事で整理しています。
譲渡制限株式では「買主が誰か」が手続きの前提になる
非上場会社の株式の多くには譲渡制限が付いており、第三者へ譲渡するには会社の承認が必要です。ここで見落とされやすいのが、承認を求める段階で譲渡先を特定していなければならないという点です。
会社法136条は、譲渡制限株式の株主が、その株式を他人(発行会社を除きます)に譲り渡そうとするときに、その他人が取得することについて承認するか否かの決定を請求できると定めています。つまり、譲る相手が決まっていない状態では、そもそも手続きの入口に立てません。仲介型の場合、買い手候補が見つかって条件が固まるまでは、会社に対する働きかけは何も始まらないことになります。
もう一つ実務的な違いが名義書換です。株主名簿の名義書換は、原則として株式取得者が名簿上の株主と共同して請求しなければならないとされています(会社法133条2項)。株券発行会社であれば取得者が株券を提示して単独で請求できるなどの例外はありますが(会社法施行規則22条2項1号)、株券を発行していない会社では、売主と買主が最後まで協力できる関係にあることが手続完了の条件になります。買主が誰であるかがはっきりしていることの価値は、この場面でも効いてきます。
どちらを選ぶかは「何を優先するか」で決まる
比較の軸は、突き詰めると3つです。価格の上限を狙いたいのか、時期を確定させたいのか、会社や親族との接触をどこまで許容できるのか。
価格を最優先し、時間をかけられるのであれば仲介型に分があります。逆に、納税や遺産分割の話し合いのように動かせない期限を抱えている場合や、買い手が現れるかどうかという不確実性そのものを避けたい場合は、買取型が現実的です。会社との直接の交渉を避けたい場合も、買主が確定している買取型のほうが動かしやすい面があります。
なお、この2つは排他的な選択ではありません。まず買取型の業者から査定を取って現金化できる水準を把握し、それを基準に、時間をかけて仲介型で探すかどうかを判断するという順序も取れます。どちらを選ぶにせよ、自分の株式がいくらで現金になるのかという実勢の目安を早い段階で一つ持っておくことが、判断の質を大きく変えます。
