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相続税は非上場株式で物納できる?制度と実務上の壁

執筆・運営:少数株ドットコム株式会社

カテゴリ

税金

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7セクション

相続財産の大半が非上場株式という場合、評価額は相応の金額で算定されるのに、手元には納税に充てる現金がないという状態が起こります。株式は換金できず、期限だけが迫る。このとき「この株式そのもので納められないか」と考えるのは自然なことです。それが「物納」という制度です。ただし、非上場株式の物納は制度としては存在するものの、実際に認められる場面はかなり限られます。どこに壁があるのかを、順を追って整理します。

相続税の納付は「金銭一括」「延納」「物納」の三段階

相続税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告し(相続税法27条1項)、同じ日を納期限として金銭で一括して納めるのが原則です。

まず押さえておきたいのは、物納が制度上いちばん最後に置かれた手段だという点です。相続税の納付方法は、金銭による一括納付が原則、それが困難な場合に「延納」(年賦による分割払い。相続税法38条)、延納によっても金銭で納付することが困難な場合に「物納」(相続税法41条)という順序で組み立てられています。

この順序には実務上の意味があります。延納であれば払えるだけの資力があると判断されれば、その時点で物納は認められないということです。延納は、相続税額が10万円を超えること、金銭で納付することを困難とする事由があり、その納付を困難とする金額を限度とすること、担保を提供すること(延納税額が100万円以下でかつ延納期間が3年以下の場合は不要)、納期限までに申請書と担保提供関係書類を提出することといった要件のもとで許可されます。まずは延納で対応できないかを検討し、それでも足りない部分だけが物納の土俵に上がる、という構造です。

物納が認められるための要件

国税庁が示す物納の要件は、大きく3つです。

1つ目は、延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていることです。ここでいう「困難」は自己申告ではありません。相続で取得した現金・預貯金・換価が容易な財産に加えて、納税義務者がもともと持っていた固有の現金・預貯金なども加味して判断されます。相続財産に現金がなくても、本人の資産で払えるとみられれば物納は認められません。この計算によって導かれる金額が、物納の許可を受けられる上限(物納許可限度額)になります。

2つ目は、物納申請財産が、納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、日本国内に所在するものであることです。相続で取得した財産でなければ物納には充てられません。

3つ目は、物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出することです。期限内に申告する場合の納期限は申告期限と同じ日ですから、実質的には10か月のうちに判断し、書類を揃えて提出しなければなりません。

物納財産の順位——非上場株式は第2順位

物納に充てられる財産には順位が定められています。

第1順位は、不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等です。このうち後述する物納劣後財産に該当するものは、同じ第1順位の中でさらに後ろに置かれます。

第2順位は、非上場株式等です。ここでも物納劣後財産に該当するものは後回しになります。

第3順位は、動産です。

後順位の財産は、税務署長が特別の事情があると認める場合、および先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限って物納に充てることができるとされています。つまり、相続財産に不動産があるのであれば原則としてそちらが先に充てられ、非上場株式の出番はそもそも回ってきません。

なお上場株式は、かつて非上場株式と同じ順位に置かれていましたが、平成29年度税制改正で第1順位に移されました。国が引き取った後に換価しやすいかどうかが順位の基準になっている、ということの表れです。市場のない非上場株式が後順位に置かれている理由も、同じところにあります。

実務上いちばん大きな壁は「管理処分不適格財産」

順位以前の問題として立ちはだかるのが、管理処分不適格財産です。国が管理・処分するのに適さない財産は、順位を論じるまでもなく物納の対象から外れます(相続税法41条2項)。

株式について何が管理処分不適格財産に当たるかは、相続税法施行令18条が具体的に列挙しています。そこには、譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式でその手続がとられていないもの、譲渡制限株式、質権その他の担保権の目的となっている株式、権利の帰属について争いがある株式、2以上の者の共有に属する株式、暴力団員等によりその事業活動を支配されている株式会社または暴力団員等を役員とする株式会社が発行した株式が挙げられています。

非上場株式を相続した方にとって重いのは、このうち2つです。

ひとつは譲渡制限株式です。非上場会社の株式の大半は定款で譲渡制限が付いていますので、この一点だけで物納の対象から外れます。国が株式を引き取っても、その後の売却に発行会社の承認が必要では処分できない、という考え方です。譲渡制限は登記事項でもありますので、まず登記事項証明書と定款で自分の株式に制限が付いているかを確認するのが出発点になります。

もうひとつは、2以上の者の共有に属する株式です。相続が開始してから遺産分割が成立するまでの間、株式は相続人全員の準共有の状態に置かれます。遺産分割がまとまらないまま10か月の期限を迎えると、この点でも物納は認められません。物納を検討するのであれば、少なくとも申告期限までに分割を成立させ、取得者を確定させておく必要があります。

結局のところ、非上場株式の物納が土俵に乗るのは、譲渡制限がなく、担保にも入っておらず、権利関係にも争いがなく、単独所有で、しかも他に不動産等の第1順位の財産がない——そこまで条件が揃った場合に限られます。制度は用意されているものの、実際にはめったに通らないというのが実情です。

物納劣後財産という区分もある

管理処分不適格財産までは至らないものの、他に物納に充てるべき適当な財産がない場合に限って物納に充てられる、という区分もあります。物納劣後財産です。株式については、相続税法施行令19条が、事業の休止(一時的な休止を除きます)をしている法人に係る株式に係る株券を挙げています。休眠状態の会社の株式は、非上場株式の中でもさらに一段後ろに置かれるということです。

申請から許可・却下までのスケジュール

物納申請の実務は、書類の量と期限の管理がすべてといってよい面があります。

物納申請書には物納手続関係書類を添付しますが、期限までに揃わない場合には、物納手続関係書類提出期限延長届出書を提出することで、1回につき3か月を限度に、最長1年まで提出期限を延長することができます。届出をしなければ自動的には延長されません。

税務署長は、物納申請期限から原則として3か月以内に許可または却下を行います。調査に時間を要する場合には、この審査期間が最長9か月まで延長されることがあります。

許可された場合、国が財産を収納する価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額、つまり相続税評価額です(相続税法43条1項)。小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた財産であれば、特例適用後の価額になります。実勢価格ではなく評価額で収納される点は、財産の内容によって有利にも不利にも働きます。

利子税にも注意が必要です。物納の許可までの期間や、提出書類の訂正を求められた期間については利子税がかかります。また、物納申請が却下された場合には、納期限または納付すべき日の翌日から却下の日までの期間について利子税がかかります。申請さえすれば時計が止まる、というものではありません。

却下された場合に残る手続き

物納申請が却下されても、そこですべてが終わるわけではありません。

まず、申請財産が管理処分不適格財産または物納劣後財産に該当することを理由に却下された場合には、却下の日の翌日から20日以内に、その財産に代えて他の財産による物納を1回に限り再申請することができます(相続税法45条1項)。1つの財産について1回限りで、再申請した財産がさらに却下された場合には、この規定は使えません。

次に、物納申請が却下された場合には、却下の日の翌日から20日以内に延納の申請をすることができます(相続税法44条)。物納の道が閉ざされたからといって直ちに一括納付を求められるわけではなく、延納へ切り替える窓口が用意されています。

さらに、いったん延納の許可を受けた後に事情が変わった場合の制度もあります。延納の許可を受けた相続税額について、延納条件の変更を行ってもなお延納を継続することが困難となったときは、相続税の申告期限から10年以内の申請により、まだ分納期限が到来していない税額部分について延納から物納へ変更することができます(相続税法48条の2)。これを特定物納といいます。ただし、収納価額は相続時の評価額ではなく特定物納申請の時の価額によることとされており、物納手続関係書類の提出期限を延長できないなど、通常の物納とは扱いが異なる点があります。あくまで例外的な救済措置と考えておくのが妥当でしょう。

実務上の選択肢は延納と売却が中心になる

ここまで見てきたとおり、非上場株式の物納は、譲渡制限が付いている時点でほぼ入口が閉じます。そのため、非上場株式を相続して納税資金に困った場合、現実にとりうる方向は次の2つが中心になります。

ひとつは、延納を活用して納付を分割し、その間に資金を用意する方法です。ただし延納期間中は利子税がかかりますので、最終的な原資をどう確保するのかという問題は残ります。

もうひとつは、株式そのものを発行会社や第三者に売却して現金化し、その代金を納税に充てる方法です。相続または遺贈により財産を取得し納付すべき相続税額がある人が、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、相続税の課税対象となった非上場株式をその発行会社に譲渡した場合には、みなし配当課税を行わず対価の全額を譲渡所得の収入金額とすることができる特例(租税特別措置法9条の7)もあり、売却先の選び方によって手取りが変わります。譲渡制限株式であっても、譲渡先が決まっていれば会社法所定の譲渡承認手続きを経て売却できますので、物納のように制度上ほぼ通らないという壁はありません。

いずれにしても、判断に使える時間は10か月です。物納が使えるかどうかの見極めと、延納・売却それぞれの資金繰りの比較は、早い段階で税理士に相談しながら並行して進めておくことをおすすめします。株式が現実にいくらで現金化できるのかという数字が早めに分かっていれば、延納と売却のどちらを選ぶかという比較そのものが具体的になります。

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