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非上場株式の評価額はどう計算する?架空企業の設例で追う計算プロセス

執筆・運営:少数株ドットコム株式会社

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株価算定

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構成
7セクション

非上場株式の評価は、通達の条文を読むだけではなかなか実感がわきません。ここでは架空の会社をひとつ用意して、貸借対照表の数字がどう組み替えられ、最終的に1株あたりいくらという金額になるのかを、順を追って計算してみます。

以下は説明のための架空の設例であり、実在の企業とは関係ありません。数値もすべて説明の便宜のために設定したものです。実際の評価は会社ごとに前提が異なりますので、ご自身のケースの評価額は必ず税理士にご確認ください。

設例:株式会社サンプル商事の概要

株式会社サンプル商事は、創業40年の食品加工業を営む中小企業という設定です。発行済株式総数は20,000株、資本金等の額は2,000万円(1株あたり1,000円)。株式はすべて創業家とその親族が保有しており、上場や第三者への売却の予定はありません。

創業者が令和8年(2026年)6月に亡くなり、相続人が株式を承継することになりました。課税時期は相続開始日です。

直前期末の貸借対照表(帳簿価額)は次のとおりとします。資産の側は、現預金8,000万円、売掛金6,000万円、棚卸資産4,000万円、土地8,000万円、建物4,000万円、上場株式2,000万円で、合計3億2,000万円。負債の側は、買掛金5,000万円、長期借入金1億円で、合計1億5,000万円です。したがって帳簿価額による純資産価額は1億7,000万円になります。

この会社は引当金を計上しておらず、課税時期までに対応する未払法人税等もないものとします。また土地は30年前に取得したもので、課税時期前3年以内に取得した土地・家屋はないものとします。

ステップ1:評価方式を決める二つの判定

計算に入る前に、二つの判定が必要です。

一つ目は、株式を取得した人が同族株主等に当たるかどうかです。同族株主等が取得した株式は原則的評価方式、それ以外の株主が取得した株式は特例的評価方式である配当還元方式で評価されます。サンプル商事の株式を承継する相続人は同族株主に当たるものとして、まずは原則的評価方式で進めます。

二つ目は会社規模です。財産評価基本通達178は、従業員数・総資産価額・取引金額をもとに、評価会社を大会社・中会社・小会社に区分します(課税時期の直前期末の従業員数が70人以上であれば、他の基準にかかわらず大会社です)。区分ごとの具体的な基準額は業種によって異なり、国税庁が公表している評価明細書の判定表に当てはめて決めていきます。ここではサンプル商事が小会社に区分されたものとします。

小会社の原則的な評価方法は純資産価額方式です(財産評価基本通達179)。なお納税義務者の選択により、類似業種比準価額と純資産価額を0.50ずつ組み合わせた併用方式によることもできますが、類似業種の株価等は国税庁が業種目別に公表する数値を用いる必要があるため、ここでは純資産価額方式の計算に絞ります。

ステップ2:資産を相続税評価額に洗い替える

純資産価額方式の出発点は、貸借対照表の各資産を相続税評価額に置き換える作業です。帳簿価額をそのまま使うのではない、という点がまず重要です。

現預金8,000万円、売掛金6,000万円、棚卸資産4,000万円は、この設例では帳簿価額と相続税評価額が一致するものとします。

土地は、路線価方式または倍率方式で評価し直します。相続税路線価は公示価格のおおむね80%の水準に設定されており、30年前に8,000万円で取得した土地が、評価の結果2億円になったとします。帳簿価額との差1億2,000万円が含み益です。

建物は、固定資産税評価額に財産評価基本通達別表1に定める倍率を乗じて評価します(財産評価基本通達89)。この倍率は現在1.0とされているため、実質的には固定資産税評価額がそのまま評価額になります。減価償却後の帳簿価額4,000万円に対して固定資産税評価額が3,000万円だったとすると、この建物は1,000万円の含み損を抱えていることになります。含み益ばかりが出るわけではない、という点は見落とされがちです。

上場株式は、課税時期の最終価格と、課税時期の属する月・前月・前々月それぞれの毎日の最終価格の月平均額とを比べ、低いほうによって評価します(財産評価基本通達169)。帳簿価額2,000万円に対して評価額が3,500万円だったとします。

洗い替えた資産の合計は、8,000万円と6,000万円と4,000万円と2億円と3,000万円と3,500万円を足して4億4,500万円です。帳簿上の3億2,000万円から1億2,500万円増えました。

ステップ3:負債を引き、評価差額に対する法人税額等相当額を控除する

次に負債を差し引きます。ここで注意が必要なのは、貸借対照表に載っている負債がそのまま使えるわけではないことです。貸倒引当金や退職給与引当金、納税引当金などの引当金・準備金に相当する金額は負債に含めません。逆に、帳簿に載っていなくても負債に含めるものがあり、課税時期の属する事業年度に係る法人税・消費税・事業税・道府県民税・市町村民税のうち事業年度開始の日から課税時期までの期間に対応する未払分、課税時期以前に賦課期日のあった固定資産税の未払分、そして被相続人の死亡により支給が確定した退職手当金や功労金などがこれにあたります(財産評価基本通達186)。

サンプル商事ではこれらの調整項目がないものとしましたので、負債は帳簿どおり1億5,000万円です。

相続税評価額による純資産価額は、4億4,500万円から1億5,000万円を引いて2億9,500万円になります。

ここからもう一段の控除が入ります。含み益を実際に実現すれば法人税等の負担が生じるという考え方から、評価差額に対する法人税額等に相当する金額を差し引くのです。評価差額は、相続税評価額による純資産価額2億9,500万円から帳簿価額による純資産価額1億7,000万円を引いた1億2,500万円です。

この評価差額に乗じる割合は、長く37%とされてきましたが、令和7年度税制改正で防衛特別法人税が創設されたことを受け、令和8年3月25日付の通達改正で38%に引き上げられました。令和8年4月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した取引相場のない株式等の評価に適用されます(財産評価基本通達186-2)。サンプル商事の課税時期は令和8年6月ですので、38%を使います。

1億2,500万円に38%を掛けると4,750万円。これが控除額です。2億9,500万円から4,750万円を引いた2億4,750万円が、法人税額等相当額控除後の純資産価額になります。

ステップ4:発行済株式数で割り、取得者の立場で調整する

2億4,750万円を発行済株式数20,000株で割ると、1株あたり12,375円になります。この一連の計算は、国税庁が公表している評価明細書の第5表、1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書の様式に沿って進めることになります。

ここで最後にもうひとつ確認すべき定めがあります。株式の取得者とその同族関係者が有する議決権の合計数が、評価会社の議決権総数の50%以下である場合には、算出した1株あたりの純資産価額に100分の80を乗じるとされています(財産評価基本通達185ただし書)。支配権を持たない立場での取得であることを評価に反映させる趣旨です。

サンプル商事の株式を承継する相続人は、同族関係者と合わせて議決権の50%を超えて保有するものとしましたので、この80%評価は適用されません。1株あたりの評価額は12,375円のままです。仮に取得者側の議決権が50%以下であれば、12,375円に80%を掛けた9,900円になっていました。

同じ株式でも、少数株主なら配当還元方式

ここまでは同族株主等が取得した場合の計算です。同じサンプル商事の株式でも、経営に関与しない株主が取得した株式は配当還元方式で評価されます(財産評価基本通達188、188-2)。金額がどれほど変わるかを見てみます。

配当還元方式では、その株式に係る年配当金額を10%で還元した金額に、1株あたりの資本金等の額が50円の何倍かを乗じて評価額を求めます。年配当金額は、1株あたりの資本金等の額を50円とした場合の発行済株式数をもとに計算した、直前期末以前2年間の平均額です。無配の場合や年配当金額が2円50銭未満の場合は、2円50銭として計算します。

サンプル商事の資本金等の額は2,000万円ですから、50円換算の発行済株式数は2,000万円を50円で割って40万株になります。直前期末以前2年間の配当が年間300万円で一定だったとすると、50円換算の1株あたり年配当金額は300万円を40万株で割って7円50銭です。

これを10%で還元すると7円50銭を0.1で割って75円。実際の1株あたり資本金等の額1,000円は50円の20倍ですから、75円に20を掛けた1,500円が配当還元価額になります。

原則的評価方式による12,375円に対して、配当還元方式では1,500円。8倍以上の開きが出ました。たとえば1,000株(発行済株式数の5%)を保有する株主で比べると、原則的評価方式なら約1,237万円、配当還元方式なら150万円が、相続税の課税価格に算入される金額になります。同じ会社の同じ株式でも、誰が取得したかによって課税される金額がこれだけ違うということです。

なお、配当還元方式で計算した金額が原則的評価方式による金額を超えるときは、原則的評価方式の金額によることとされています。

この12,375円は「売れる値段」ではない

最後に、この計算結果の位置づけを確認しておきます。

12,375円という数字は、相続税の課税価格を計算するために通達のルールに従って導いた金額であって、その値段で買い手がつくことを意味しません。1,000株を持つ少数株主にとっては配当還元方式による150万円が課税価格になる一方、その株式を実際に現金化しようとすると、譲渡制限が付いていて自由に売れない、発行会社は買い取ってくれない、といった壁に突き当たることがあります。

逆方向のずれもあります。個人が非上場株式を譲渡する場合の税務上の時価については、所得税基本通達59-6が財産評価基本通達を準用しつつ読み替えを求めており、譲渡直前に中心的な同族株主に該当する個人が譲渡するときは発行会社を常に小会社として評価すること、土地や上場有価証券は譲渡の時における価額によること、そして評価差額に対する法人税額等相当額を控除しないこととされています。サンプル商事の設例にこの読み替えを当てはめれば、4,750万円の控除がなくなるため、1株あたりの金額は2億9,500万円を20,000株で割った14,750円まで上がります。

相続税評価額、税務上の時価、実際の売買価格は、それぞれ別の目的で計算される別の数字です。売却を検討する場面では、通達に基づく評価額を把握しておくことは出発点として有効ですが、それだけで交渉に臨むと、提示された金額が高いのか安いのかを判断する材料を持てません。評価方法の全体像については、代表的な3つの評価方法を整理した別の記事もあわせてご覧ください。

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