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発行会社から「買い取らない」と言われたら?少数株主が取れる選択肢
執筆・運営:少数株ドットコム株式会社
カテゴリ
少数株主の権利
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- 7セクション
発行会社や経営者一族に「株式を買い取ってほしい」と打診したところ、「買い取るつもりはない」「買い取るとしても額面まで」と返されて行き詰まる。非上場株式の少数株主の方から、最も多く寄せられるご相談のひとつです。
結論から言えば、この段階で打つ手がなくなったわけではありません。ただし次の一手を選ぶには、なぜ会社が渋るのかという構造と、法律が用意している出口の位置づけを、分けて整理しておく必要があります。
発行会社に「買い取る義務」は原則としてない
まず押さえておきたいのは、株主から請求されたからといって、発行会社が自社株を買い取らなければならない法的な義務は、原則としてないという点です。会社が自己株式を取得できる場面は会社法155条以下に定められていますが、これは「取得できる」という規定であって、「取得しなければならない」という規定ではありません。合併などの組織再編に反対する場合のように、法律が例外的に買取請求権を認める場面を除けば、発行会社への直接の買取打診はあくまで任意の交渉です。断られること自体は、法的には想定内の反応といえます。
ですから、断られたことをもって「この株式には価値がないと会社が認めた」と受け取る必要はありません。交渉のスタート地点に立っただけ、というのが正確な理解です。
会社が「買いたくない」「買えない」構造的な理由
会社側の反応を、単なる意地悪や交渉技術と受け取ってしまうと、次の手を誤ります。実際には、会社が動きにくい制度上の理由がいくつもあります。
ひとつは手続きの重さです。会社が株主との合意で自己株式を取得するには、あらかじめ株主総会の決議で、取得する株式の種類・数、対価の内容と総額、取得することができる期間を定めなければなりません(会社法156条1項)。株主全員に売却の機会を与える方式であれば普通決議で足りますが、売主となる特定の株主を指名して買い取る場合には、株主総会の特別決議が必要になります(会社法160条1項、309条2項2号)。
さらに大きいのが、売主追加請求権です。特定の株主から買い取る議案を出すと、他の株主は自己も売主に加えるよう請求することができます(会社法160条3項)。換金しにくい株式について売却機会の平等を図るための制度ですが、会社の側から見ると、ひとりの株主に応じたことをきっかけに、他の株主からも一斉に買取りを求められる可能性が生じるということです。「前例をつくりたくない」という反応の背景には、この仕組みがあります。
ただし例外があります。会社法162条は、公開会社でない株式会社が、相続その他の一般承継により株式を取得した者からその株式を取得する場合には、売主追加請求権の規定を適用しないと定めています(その相続人等が当該株式について株主総会で議決権を行使した場合などを除きます)。相続で株主になった直後は、会社の側から見ても手続きのハードルが一段低い局面だ、ということです。
もうひとつは財源の問題です。会社法は自己株式の有償取得を剰余金の配当と同じ枠組みで規律しており、取得の対価として交付する金銭等の帳簿価額の総額は、効力発生日における分配可能額を超えてはならないとされています(会社法461条1項)。いわゆる財源規制です。これに反した取得が行われると、会社の役員だけでなく、対価を受け取った株主の側にも返還義務が生じ得ます。剰余金が乏しい会社は、買う意思があっても買えないことがあるのです。
会社が本当に買いたくないのか、手続きや資金の制約で買えないのか。どちらなのかによって、有効な次の一手は変わります。
「額面でなら買う」という提示をどう見るか
いわゆる額面や、設立・増資のときの払込金額に、現在の株式価値を拘束する法的な効力はありません。そもそも額面株式の制度自体、2001年10月1日施行の商法改正によって廃止されており、現在の株式に額面という概念はありません。「額面で」という言い方は実務の場に残った慣用表現にすぎず、会社側が示したひとつの交渉額として受け止めるのが適切です。
もっとも、対案を出さずに「安すぎる」とだけ主張しても交渉は動きません。直近の決算書から純資産の水準を確認し、相続税評価額の考え方や株価算定の代表的な方法を踏まえて、いくらであれば納得できるのかを自分の側で用意しておく必要があります。会社が決算内容を開示しない場合、総株主の議決権の100分の3以上、または発行済株式の100分の3以上を保有していれば、会計帳簿の閲覧謄写を請求する道もあります(会社法433条1項。定款でこれを下回る割合を定めることもできます)。
譲渡承認請求に買取りを添えるという道
ここで効いてくるのが、「会社に直接買ってくださいと頼む」ことと、「第三者への譲渡承認請求にあわせて買取りを求める」ことは、法的な位置づけがまったく異なるという点です。
譲渡制限株式を第三者に譲渡しようとする株主は、発行会社に対し、譲渡を承認するかどうかの決定を求めることができます(会社法136条、137条1項)。このとき、承認しないのであれば会社または会社が指定する買取人に買い取ってほしい、という請求を併せて行っておくことができます(会社法138条1号ハ・2号ハ)。この一文を添えたかどうかで、その後の展開が大きく変わります。
会社が請求の日から2週間以内に承認・不承認の通知をしなければ、承認したものとみなされます(会社法145条1号。定款でこれを下回る期間を定めた場合はそれによります)。会社が総会や取締役会を開かずに放置しても、それだけで手続きが止まるわけではありません。
会社が不承認と決めた場合、買取りの請求が添えられていれば、会社はその株式を買い取らなければなりません(会社法140条1項)。会社自身が買い取るときは株主総会の特別決議が必要で、その決議において譲渡等承認請求をした株主自身は議決権を行使できません(会社法140条2項・3項、309条2項1号)。会社に代えて買取人を指定することもでき、その指定は取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会の決議によります(会社法140条4項・5項)。
その先も期限で管理されています。会社が買い取る場合は不承認の通知の日から40日以内、指定買取人が買い取る場合は10日以内に買取りの通知をしなければ、やはり承認したものとみなされます(会社法145条2号)。また会社が買取りを通知する際には、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額を本店所在地の供託所に供託し、その供託を証する書面を株主に交付しなければなりません(会社法141条2項)。買い取ると言いながら代金を用意しない、という事態を防ぐための仕組みです。
そして価格です。売買価格はまず当事者の協議によって定めますが、折り合わない場合、買取りの通知があった日から20日以内に、裁判所に売買価格の決定を申し立てることができます(会社法144条1項・2項。指定買取人が買い取る場合は同条7項による準用)。協議が調わないまま、この20日を過ぎて誰も申し立てなければ、1株当たり純資産額に対象株式の数を乗じて得た額が売買価格として確定します(同条5項)。期限管理を誤ると、交渉の余地そのものを失いかねない場面です。
この枠組みを使うには「譲渡先」が要る
注意したいのは、この制度が「第三者への譲渡を試みる」ことを起点にしている点です。承認を求める以上、誰に譲渡するのかが決まっていなければ請求そのものが成り立ちません。会社に買取りを迫るためだけの制度ではなく、あくまで譲渡の承認手続きに付随する仕組みだということです。
裏を返せば、実際に買う意思のある第三者を確保できていれば、二段構えの出口をつくれます。会社が承認すれば、その第三者への売却がそのまま成立します。承認しなければ、会社または指定買取人が買い取ることになります。どちらに転んでも現金化には至る、という状態に持ち込めるわけです。非上場株式を自ら買い取る事業者を譲渡先に選んでおく意味は、ここにあります。手続きの具体的な流れは、別の記事で解説しています。
なお会社の側から見れば、見知らぬ第三者が株主名簿に載るくらいなら自社で買い取ったほうがよい、という判断が働くこともあります。当初の「買い取らない」という回答が、承認請求を経て変わることは実務上珍しくありません。
持ち続けながら株主として動く道
現金化を急がないのであれば、株主としての権利を行使して状況を動かす選択肢もあります。1株でも行使できる株主名簿の閲覧謄写請求(会社法125条2項)で株主構成を確認し、3%以上を保有していれば会計帳簿の閲覧謄写請求(会社法433条1項)や株主総会の招集請求(会社法297条1項)ができます。取締役会設置会社であれば、総株主の議決権の100分の1以上または300個以上の議決権を保有することで、剰余金の配当などを株主総会の議題・議案として提案することも可能です(会社法303条2項、305条1項)。譲渡制限株式のみを発行する非公開会社では、これらに6か月の保有期間要件は課されません。
ただし、これらは権利行使それ自体が目的ではなく、配当や情報開示、あるいは持分の適正な評価を引き出すための手段です。時間も費用もかかりますので、最終的に現金化を望むのであれば、売却先を確保して手続きを進めるほうが早いという判断も十分に成り立ちます。
待っているうちに会社側から動いてくることもある
逆方向の動きも想定しておく必要があります。定款に定めがある会社は、相続その他の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、その株式を会社に売り渡すよう請求することができます(会社法174条、176条1項)。また、総株主の議決権の10分の9以上を有する特別支配株主がいる場合、その株主は他の株主全員に対し、有する株式の全部を売り渡すよう請求することができます(会社法179条1項)。いずれも株主の側で拒むことは原則としてできず、価格に不服があれば裁判所の決定を求めることになります。
「様子を見る」という判断も、それ自体がひとつのリスクを抱えている、ということです。
まとめ
「買い取らない」という回答を受けたときに取りうる方向性は、大きく三つに整理できます。ひとつは、弁護士に交渉を依頼し、法的な整理と価格の根拠を示したうえで話し合いを続ける方法。ふたつめは、第三者への譲渡承認請求に買取請求を添えて、会社法140条以下の枠組みに持ち込む方法。みっつめは、はじめから買取業者などの第三者を譲渡先として確保し、会社との一対一の交渉に時間をかけない方法です。
どれを選ぶべきかは、早く現金化したいのか、価格を優先したいのか、会社や親族との関係をどこまで維持したいのかによって変わります。少なくとも「買い取らない」と言われた時点で手が尽きたわけではない、という点は押さえておいていただければと思います。
