発行会社から「買い取らない」と言われたら?少数株主が取れる選択肢
発行会社や経営者一族に「株式を買い取ってほしい」と打診したところ、「買い取るつもりはない」「買い取るとしても額面まで」と返されて行き詰まる。非上場株式の少数株主の方から、最も多く寄せられるご相談のひとつです。
まず押さえておきたいのは、株主から請求されたからといって、発行会社が自社株を買い取らなければならない法的な義務は、原則としてないという点です。会社が自己株式を取得できる場面は会社法155条以下に定められていますが、これは「取得できる」という規定であって、「取得しなければならない」という規定ではありません。合併などの組織再編に反対する場合のように、法律が例外的に買取請求権を認める場面を除けば、発行会社への直接の買取打診はあくまで任意の交渉です。断られること自体は、法的には想定内の反応といえます。
これと明確に区別したいのが、譲渡制限株式について第三者への譲渡承認請求を行い、その際に会社(または指定買取人)による買取りもあわせて請求したうえで(会社法138条1号ハ・2号ハ)、会社がこれを承認しなかった場合です。このときは、会社自身または会社が指定する買取人(指定買取人)がその株式を買い取らなければならないとされています(会社法140条1項)。買取りの請求をしていなければ、不承認になっても当然に買取義務が生じるわけではありません。売買価格が協議でまとまらない場合には、当事者は裁判所に売買価格の決定を申し立てることができます(会社法144条)。つまり「会社に直接買ってくださいと頼む」ことと「第三者への譲渡承認請求にあわせて買取りを求める」ことは、法的な位置づけがまったく異なります。後者の具体的な流れは、別の記事で手順として解説しています。
「額面でなら買う」という提示についても、いわゆる額面や設立・発行時の払込額に、現在の株式価値を拘束する法的な効力があるわけではありません(そもそも日本では2001年の商法改正により額面株式の制度自体が廃止されています)。あくまで会社側が示した一つの交渉額に過ぎません。実際の企業価値と大きく離れていることも珍しくないため、相続税評価額や株価算定の考え方を踏まえて、提示された金額が妥当かどうかを一度検討する価値があります。
交渉が動かないときに取りうる方向性は、大きく三つあります。一つ目は、弁護士に交渉を依頼し、法的な整理を示したうえで話し合いを続ける方法。二つ目は、第三者への譲渡承認請求を行い、会社法140条の枠組みに持ち込む方法。三つ目は、はじめから第三者の買取業者を譲渡先として選び、会社との一対一の交渉に時間をかけない方法です。株売却ドットコムのような買取型のサービスは三つ目にあたり、譲渡先が決まった状態で手続きを進められる点が違いになります。
どの道を選ぶべきかは、早く現金化したいのか、価格を優先したいのか、会社や親族との関係をどこまで維持したいのかによって変わります。少なくとも「買い取らない」と言われた時点で手が尽きたわけではない、という点は押さえておいていただければと思います。