会社の合併・組織再編に反対したら?「反対株主の株式買取請求権」とは
自分が株式を持つ非上場会社が、合併や会社分割、株式交換といった組織再編を行うことになった。提案された条件に納得がいかず反対したいが、株主総会で可決されれば会社の決定は覆らない——そんなとき、会社法は反対株主のための出口をあらかじめ用意しています。それが「株式買取請求権」です。
この制度は、組織再編の議案が可決されても、それに反対した株主が、自己の保有する株式を「公正な価格」で買い取るよう会社に請求できるというものです。根拠条文は対象となる行為ごとに分かれています。吸収合併の消滅会社・吸収分割の分割会社・株式交換の完全子会社の株主には会社法785条、吸収合併の存続会社・吸収分割の承継会社・株式交換の完全親会社の株主には797条、新設合併・新設分割・株式移転には806条が適用されます。事業譲渡等については469条、株式の内容についての一定の定款変更等には116条、1株に満たない端数が生じる株式併合には182条の4が、同様の買取請求権を定めています。
請求するには手続き上の要件があります。原則として、株主総会に先立って当該行為に反対する旨を会社に通知し、かつ実際に総会で反対の議決権を行使している必要があります(議決権を行使できない株主にも別途認められる場合があります)。請求できる期間も定められており、吸収合併等や事業譲渡等では効力発生日の20日前の日から前日まで(785条5項・469条5項)、新設合併等では会社からの通知または公告があった日から20日以内(806条5項)です。この期間を過ぎると請求できなくなるため、反対する意思があるなら早めに動く必要があります。
買取価格は、まず会社との協議によって定めるのが原則です。協議が調わない場合、効力発生日から30日以内に協議が成立しないときは、その期間の満了の日から30日以内に、裁判所に価格決定の申立てをすることができます(786条2項)。裁判所は、組織再編によって生じる企業価値の増減等の事情を踏まえて、公正な価格を判断します。
混同しやすいのが、譲渡制限株式の譲渡承認が得られなかった場合に会社(または指定買取人)との間で行う売買価格決定の手続き(別の記事で解説)です。あちらは株主自身が第三者への譲渡を試みて承認されなかったことが起点ですが、こちらは会社が主導する組織再編に株主が反対したことが起点という点で、制度の趣旨が異なります。
なお、会社の形態そのものを変える「組織変更」(株式会社から持分会社への変更など)には、この買取請求権の制度がありません。組織変更は効力発生日の前日までに総株主の同意を得ることが必要とされているため(776条1項)、そもそも反対する株主がいれば組織変更自体が成立せず、反対株主の存在を前提とした買取請求権を用意する必要がないからです。合併等と同列に考えて探してしまいやすい点なので、注意しておくとよいでしょう。
組織再編への反対から価格交渉、裁判所への申立てまでは、専門的な判断が必要な場面が多い手続きです。反対の通知や議決権行使のタイミングを誤ると請求権自体を失いかねないため、反対の意思が固まった段階で早めに弁護士へ相談することをおすすめします。